■ 悩ましい「3回コイン投げ」

 「屈辱の数学史」(マット・パーカー)を読みました。その中に、うっかり勘違いしやすい確率の問題が載っています。

 2人で次のような賭けをしたとき、どちらが勝つ確率が大きいかという問題です。

 コインを連続して投げ続け、予想した3回連続のパターンが先に出た方の勝である。ただし、3回ごとに区切るのではなく、両者の予想のどちらも出なかったら、次の1回を投げ、その前2回と合わせた3回のパターンで判定する。そのようにして1回投げるごとに判定する賭けで「あなた」が先に予想し、「私」はそれを見て、自分の予想をするならば、「あなた」の予想が先に出る確率はどのようになるか。

 3回ごとに区切っての判定でないのが少し気になりますが、3回連続の出目のパターンの確率はどれも1/8なので、後で予想したところで、じゃんけんの後出しではないので、「あなた」の勝つ確率は変わらないように思えます。著者も最初はそう思ったと書いています。しかし、実はじゃんけんの後出しと同じで、「あなた」の勝つ確率は次のようになると書いてあります。

あなたの予想  私の予想    あなたの勝つ確率

表表表     裏表表     12.5%

表表裏     裏表表     25%

表裏表     表表裏     33.3%

表裏裏     表表裏     33.3%

裏表表     裏裏表     33.3%

裏表裏     裏裏表     33.3%

裏裏表     表裏裏     25%

裏裏裏     表裏裏     12.5%

 

 具体的に確率を確認してみたところ、上記の二つ目まではすぐにわかりました。ところが、3番目で行き詰まってしまいました。順番にコインを投げて「あなた」の予想が先に出るパターンを調べる方針だったのですが、爆発的に調べるケースが増えてしまい収拾がつかなくなってしまいました。この過程でいろいろ面白いことに気づきましたが、それはまた別の機会にします。

 3番目の確認をあきらめかけましたが、ヒントは本に書いてありました。最初から順番に調べるのではなく、逆に調べれば簡単でした。予想したパターンが初めて出た時から前に遡って、可能なコインの表裏の出方を調べればよいのでした。解答は次の様になります。見やすいように表を〇、裏を✕で表します。

 

1 〇〇〇と✕〇〇の場合

 初めて〇〇〇が出る前はしかありえない。が出たのなら、1回前に    〇〇〇がでたことになり、初めてではないからだ。したがって〇〇〇が出る1回前に〇〇が出ていて、私の勝である。結局、〇〇〇で勝つのは、初っ端に出る場合しかありえず、その確率は1/8である。

 

2 〇〇✕と✕〇〇の場合

 初めて〇〇✕が出る2回前までの可能なパターンを考える。の4通りがあるが、可能なのは1通りだけである。

 

 〇〇✕ 可能

 〇〇✕ 1回前に〇〇が出ているのでありえない

 〇〇✕ 2回前にが出ているのでありえない

 〇〇✕ 1回前に〇〇が出ているのでありえない

 

 それに対して、初めて✕〇〇が出る2回前までの可能なパターンは3通りである。

 

 ✕〇〇 2回前に✕が出ているのでありえない

 ✕〇〇 可能

 〇✕〇〇 可能

 ✕〇〇 可能

 

 以上より、あなたが勝つ確率は1/4である。

 

3.〇✕〇と〇〇✕の場合

 初めて〇✕〇が出る2回前までの可能なパターンの内、可能なのは1通りだけである。

 

 〇✕〇 1回前に〇✕が出ているのでありえない。

 〇✕〇 2回前に〇が出ているのでありえない。

 〇✕〇 1回前に〇✕が出ているのでありえない。

 〇✕〇 可能

 

 初めて〇〇✕が出る2回前までの可能なパターンの内、可能なのは3通りである。

 

 〇〇✕ 可能。

 〇〇✕ 2回前に〇が出ているのでありえない。

 〇〇✕ 可能。

 〇〇✕ 可能。

 

 以上より、あなたが勝つ確率は1/4である。

 

4.〇✕✕と〇〇✕の場合

 初めて〇✕✕が出る2回前までの可能なパターンの内、可能なのは2通りだけである。

 

 〇✕✕ 1回前に〇✕が出ているのでありえない。

 〇✕✕ 可能。

 〇✕✕ 1回前に〇✕が出ているのでありえない。

 〇✕✕ 可能

 

 初めて〇〇✕が出る2回前までの可能なパターンの内、可能なのは4通りすべてである。

 

 〇〇✕ 可能。

 〇〇✕ 可能。

 〇〇✕ 可能。

 〇〇✕ 可能

 

 以上より、あなたが勝つ確率は1/3である。

 

  なお、3回以上前の出目は、あなたと私の最後の3回のパターンとは関連しないので考慮しなくてよいです。

 

 さて、お気づきでしょうか。私の解答と、本に書いてある3番目の解答は違います。著者はプロの数学教師ですので、私が間違っている可能性が大きいです。簡単だと書きましたが、実のところ、少し自信がありません。ところが、さらに悩ましいことに、この本の著者は、「第0章はじめに」に次のように書いているんですよ。

実は、本書を作る際にもいくつかミスをしたが、面白いのでそのうち3つはそのまま残してある。

 

【5/30 追記】

どうも、3番目のケースは、〇✕〇と〇〇✕の場合は、私が間違えているようです。力ずくで10回まで投げた場合の「あなた」の予想が先に出る確率は、0.33008となりました。この時点で既に1/4を超え、1/3に極めて近いです。

しかし、どこに間違いがあるのか分からないのだな。