日本語の語順

 日本語の曖昧さは何かと話題になります。中村明裕さんのツイートは5つの解釈が可能な面白い一例です。文章を書いていると自分の意図と違う解釈をされることは頻繁にありますね。修飾部分がどの言葉を修飾しているか複数の解釈が可能だからです。とはいえ日本語でも、5つの状態の猫あるいは猫人間を区別できる異なる表現は可能です。それを試みたのが以下の5つです。日本語が母国語である人には納得していただけると思いますが、いかがでしょうか。

 

1.魚を食べる頭が赤い猫

2.頭が赤い魚を食べる猫

3.赤い魚を食べる頭の猫

4.赤い魚を食べる頭が猫だ

5.魚を食べる赤い頭が猫だ

 

 ところで、ネット上では、最初の3つ猫の絵は分かるが、後の2つの猫人間の絵は理解できないという声があります。後ろの2つの猫人間解釈は、「(人間の)頭が、○○な猫(になっている)。」という体言止めの文と解釈したわけです。「所さんの目がテン」と同じですが、少し分かりにくいのかもしれません。

 

 上記の1.から3.までの表現にもう一つ加えた4つの表現について、いろいろな解釈を図解の表にまとめました。「自然な解釈」のほか「可能な解釈」も示しましたが、このように読ませるには、読点を付ける必要があります。話す場合は、読点のところで間を置くことになります。

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 日本語は語順が自由と言われますが、標準的な語順はあるようです。「日本語はどんな言語か」(小池清治)という新書には「皆が待っていたあの春の暖かい風」という例が載っています。

 

皆が待っていた(節)

あの(連体詞)

春の(句)

暖かい(用言の連用形)

風(被修飾語)

 

 大雑把に言えば、長い節は短い句や語を飛び越えて被修飾語に達しますが、その逆は可能ではあるものの不自然に感じるのだと思います。小池清治氏のいうこのような「柔らかい規則」は他にも多くあり、日本語を母国語としているなら暗黙知として持っていると思います。しかし、意識していないので、私も分かりにくい文章を書いてしまうことが度々あります。意識すれば、文章を書くときには役立つのではないでしょうか。

 

 自然言語は、自然科学が扱う対象と似ているところがあります。専門家でなくても、言葉は話すし、リンゴが落ちることは知っています。しかし、その裏にある規則や原理は意識してはいません。専門家がそれを明らかにしてくれると「なるほど」と納得できますし、面白いですね。