築地に戻ろうと本気で考えている市場関係者っているの?

 豊洲市場が開場してひと月過ぎました。相変わらず欠陥施設という批判も続いています。この批判を何の目的のために行っているのかは、市場関係者、政党、メディア、建築関係者、その他によってそれぞれです。もし、築地に戻るという目的だった場合、このような批判は無意味ですが、何故か行われているようです。。

 築地に戻りたいのなら、設計事務所の瑕疵を指摘しても全く無意味です。言うまでもなく、設計事務所は、豊洲移転決定後に豊洲に建設する施設の設計を行っただけです。仮に設計瑕疵があったのなら、豊洲市場として満足な施設になるように再設計や補修工事の賠償責任が生じるだけで、築地に戻る話には全く繋がりませんからね。

 築地に戻りたいなら、むしろ設計事務所には過失がなかったというべきでしょう。最大限の努力をし、なんら過失がないにも拘わらず、市場として不満足な結果になったのは、豊洲という立地にあり、その責任は場所を決定した、東京都と市場関係の事業者組合にあると批判しなければなりません。ところが、現実の批判は豊洲の立地に関わるものは殆ど見当たりません。

 移転後も続くグズグズの設計への難癖は、築地に戻るためではなくて、移転阻止に失敗した憂さ晴らし、愚痴としか世間の目には映らないと思います。築地に戻ることを現実的な目的としているようにはとても思えません。

 一方、立場が違えば、設計への難癖も目的に沿ったものになります。先ず、都政野党の共産党は、都の与党の落ち度の攻撃材料として使えるならなんでもいいわけです。能力のない設計事務所を選定した責任、業務の検査がザルだった責任追及に使えます。本来は、移転に絡む利権疑惑などが良く、当初は言っていたのですが、決定的証拠がないのか、トーンダウンし、最近は設計瑕疵みたいなことばかり言っています。

 次に、メディアの目的も、都政与党への批判ですが、残念ながらモリカケ騒動で分かるようなレベルの批判しかできていませんが、まあ、それでも十分目的にかなうわけです。市場が築地に戻ろうが、戻るまいが、とにかく批判できればいいのではないでしょうか。

 最後に建築関係者ですが、政党と結びつきの深い建築士や、「非常識な建築業界に異を唱える建築家」といったキャッチコピーが似合う人達です。前者の場合は、政党の目的と同じでしょうし、後者の場合は、「批評・批判」を仕事にしており、それが目的でしょう。

 いずれの場合も、野党的立場で、既定路線を批判するのが仕事みたいなものです。その批判には真っ当なものも、お門違いもあると思いますが、築地に戻りたい市場関係者を利用しているだけに見えるのですね。最初に述べた様に、設計瑕疵を指摘したところで、築地に戻る助けには全くなりませんが、自分の利益にはなるからです。最初は、被害者を支援するように振舞っていても、結局、被害者を利用しているだけという実例は、薬害事件でありました。勝訴の見込みのない訴訟を起こす弁護団の類です。築地に戻れる見込みもまずありません。

 もっとも、いまだに設計に難癖をつけているのは、政党、メディア、建築関係者だけで、築地に戻りたい市場関係者は殆ど存在しない可能性もあります。この場合は、まあどうしようもありません。

【追記】
 この記事を書いている時に、豊洲市場の「床」が抜けたという衝撃的なツイートがありました。画像では床というか、何かの蓋のように見えますが、酷い状態であるのは確かです。果たして、設計瑕疵なのか施工瑕疵なのか、はたまた利用者がとんでもない使い方をしたのかは、現時点では不明です。いずれにしても、築地に戻る理由にならないのは、記事に書いたとおり、豊洲という立地とは無関係だからです