築地市場の動線

 「築地市場動線は優れている」というツイートを見かけました。驚いて、「築地市場には、そもそも動線がない」という指摘もあると、リツイートしました。

築地市場はとっても危険でヤバイです。

次の動画を見れば、部外者の私には、「とっても危険」としか思えません。実際に行ってみて身の危険を感じたというのもあります。

カオス過ぎる築地市場の交通整理

 にもかかわらず、実際に市場を使っている当事者が、築地市場が優れていると仰るわけです。何故なのでしょうか。それを確かめるには、築地市場動線を確かめなければなりません。

 ところが、何ということか、現在の築地市場動線を説明したものが見つけられないのです。例えば、現代思想の2017年臨時増刊号「築地市場」に中沢新一氏が執筆している記事には、昭和10年竣工時の物流動線と現在の物流動線の図が示されています。ところが昭和10年の図には矢印で動線が示してあるのに、現在の図にはなにも示してありません。動線がないのです。

 実に奇妙ですが、その謎を解く鍵は、同じ記事にありました。つぎのような記述があります。

築地市場内を自在に動き回っていたターレも、(豊洲市場の)この窮屈な渡り廊下の中では一方向に流れていくしかなく、多くの仲卸はかえって事故が起きやすくなるのでは、という懸念を抱いている。」

 一般的に優れた動線とは、一方向に流れが整理され、行く先の違う流れは交錯しません。先の動画のような交通整理や信号は不要です。高速道路には信号がありません。ところが、他の施設でも、このようなきちんと管理された動線は、当初、現場の人にとって評判が悪いことがあります。動線が交錯しようが、現場で上手く処理するので、いままで通り、自由に動ける方がよいと言われたりします。豊洲市場では、それに加えて、一方向の流れの方が事故も起きやすいとすら思われているわけです。これは、禁煙なんぞしたら、ストレスでかえって寿命が縮まるというヘビースモーカーの不満に似ています。

 結局、築地市場動線が優れているというのは、定まった動線がなく、好きに動けることのようです。自由度が大きいのは、それだけに留まりません。築地市場の通路は、車両も歩行者も自由に通行できますし、駐車スペースや発泡スチロール置場としても自由に使われています。その結果、通路は狭くなりますが、抜群の運転技量でなんなく通行しています。かなりの交通事故は発生しますが、死亡事故はめったにありません。

 築地魚市場へ潜入

 豊洲市場では、そういう自由がないのも評判が悪い理由なのかもしれません。動線に限らず、自由が制限される管理は嫌われることは良くあって、もっともな場合とそうで無い場合があります。