小池知事の弥縫策がもたらす被害

都、石原氏の責任追及困難豊洲訴訟、近く提示か

小池百合子知事が選任した新たな弁護団が、資料などの証拠を精査した結果、石原氏に対し、都として法的な責任を問うのは難しいと判断したもようだ。東京地裁に判断を委ねるとみられる。関係者によると、週明けに開かれる進行協議で示される可能性があるという。

石原氏の責任否定文書、都弁護団が撤回 豊洲用地訴訟

東京都の豊洲市場用地のうち、都が東京ガス側から土壌汚染のある土地を578億円で購入したのは違法だとして、都民らが都に対し、購入を決めた石原慎太郎・元都知事に損害賠償請求をするよう求めた住民訴訟で、都の弁護団は7日、石原氏に賠償責任はないとする従来の方針を支える証拠文書を撤回したことを明らかにした。

 この二つの記事を繋げると、「都の弁護団は石原氏の責任を問うのは難しいと考えるが、責任がないとも主張しない」となり、なかなかアクロバティックです。好意的に解釈すると、グレーなので都は判断を裁判所に預けたということでしょうが、「グレーでは、損害賠償できない」と主張しなければならないと私は考えます。なぜかって、グレーで損害賠償されてはたまったもんじゃありませんからね。

 それに、住民からの請求があれば、まず、行政庁としての判断があり、その是非を裁判で争うのが順番じゃないですかね。最初から裁判所に判断を預けるのは、都の業務放棄のような気がするのですが、そんなのありですか。

 通常の裁判は被告が反論しなければ原告の主張が自動的に認められてしまいます。行政裁判も同じだとしたら、石原氏の責任を問う原告住民の主張を被告の東京都が否定しなければ、石原氏に損害賠償を求めなければならなくなりますね。その一方で、東京都は石原氏の責任追及は困難というのですから、不可解千万です。責任を問えないと分かっていながら、責任を問えという要求に反論しないのは、責任の有無の判断が出来ないと無能を晒す以上に不誠実じゃないでしょうか。

 この裁判では石原氏は当事者ではありませんが、都が敗訴して損害賠償を求めれば、石原氏は当事者として請求無効を主張するでしょう。その裁判においても、都は石原氏の責任は問えないと反論しなければ敗訴になりますね。この状況は、都が全く主体性のないメッセンジャーとして、無駄に裁判の回数を増やしていますし、さらに、損害賠償請求しても、しなくても違法という困った状況に陥ってしまいかねません。

 現実にはこのような経過はたどらないのかもしれませんが、かつての諫早湾開門訴訟のようなこともあります。事業は多くの関係者の利害を調整して成り立つものですから、人気取りの思いつきの「方針変更」は、事態を混乱させるばかりです。都の弁護団の矛盾した態度も、小池知事への配慮からでたもので、小池知事が元凶です。小池知事の考えは弁護団としても間違っていると言わざるを得ないけれども、知事のメンツをつぶさないため気も使わなければならないので、こんな奇妙な態度になるのでしょう。

 小池知事が追及しようとした、石原氏も、談合疑惑も、黒い頭のネズミも、市場施設の不備も、食の安全の脅威もことごとく、幻想でした。そして、都議選も終わり、この失敗を取り繕っているのが今です。都の弁護団の不可解な言動も、「豊洲は活かす、築地も残す」という非現実的な計画も、間違いを認めずに取り繕う弥縫策でしょう。悪いことに、弥縫策は、被害を拡大します。築地残留派も含めた市場関係者、豊洲出店予定の民間事業者、豊洲住民も築地住民も、オリンピック関係者も大打撃を受けています。ついでに、小池知事を支持した都民も。利益を得たのは、「都民ファーストの会」議員と、小池知事の側近ぐらいじゃないでしょうか。つまり、「都民ファーストの会ファーストの会」