「常時同時配信の負担のあり方について」について

「常時同時配信の負担のあり方について」を読みました。
http://www.nhk.or.jp/keieikikaku/shared/pdf/01toushin.pdf

 費用負担の在り方について,分類整理をしてあり,図らずもというか皮肉もというか,放送法の矛盾が分かりやすく説明した結果になっています。

 答申では,まず,費用負担者を次のように4分類しています。

【利用の契機がある場合に費用負担あり】
 ①「PC等設置者」PC等の接続端末を設置したものに費用負担あり
 ②「視聴環境設定者」PC等の接続端末を設置したうえで,
   常時同時配信利用のための何らかのアクションもしくは手続きを行い
   視聴可能な環境を作ったものに費用負担あり

【利用の契機の有無にかかわらず費用負担あり】
 ③「全世帯負担金」PC等の所持・設置の有無にかかわらず,費用負担あり

【費用負担なし】
 ④「無料」

 また,利用の契機がある場合の費用の性質に応じた料金徴取のタイプを,二つに分類しています。

a 「受信料型」 NHKの事業の維持運営のための特殊な負担金とする考え方
b 「有料対価型」 利用・サービスの対価とする考え方

 次に,料金徴取のタイプに適した費用負担者を検討しています。

 a「受信料型」の場合,①「PC等設置者」は適せず,②「視聴環境設定者」が合理性があるとしています。
 b 「有料対価型」の場合,②「視聴環境設定者」の一部としています。一部とは何かが重要な点ですが,一般の取引同様に利用契約を結んだ「利用契約者」であるとしています。

 結局,「受信料型」にも「有料対価型」にも ①「PC等設置者」は,適していないと言っているのが面白いところです。少なくとも,常時同時配信に関しては,①「PC等設置者」からは,「受信料型」としても「有料対価型」としても料金を取ることは出来ないと言っているのです。ただし,全くできないというわけではなく,③「全世帯負担金」として徴収することは出来ますが,これはほぼ税金であり,日本では現実味がないと述べています。

 さて,ここで地上波放送に立ち戻ってみます。放送法では,NHK運営のための特殊な負担金としています。ズバリその名も「受信料」です。そして,実に奇妙なことに「受信料」を徴収するために契約を義務付けています。答申は上述のとおり,契約が必要なのは利用・サービスの対価である「有料対価型」と述べていますから,放送法を無視していることになります。PCもTV受像機も情報端末という意味では同じと考えると,TVの受信料も「TV等設置者」から徴取はできず,「視聴環境設定者」からしかできないと答申は言っていることになります。

 問題は,「視聴環境設定者」とは何者かが曖昧な点です。インターネット上にも有料コンテンツがあり,手続きをしなければ見ることができません。②「視聴環境設定者」がそのような手続きをした者ならば何ら問題はありません。しかし,答申では,あくまで「受信料型」であるので「有料対価型」のような厳格な認証手続きではない「ゆるやかな認証」としていて,一抹の不安を覚えます。「ゆるやか認証」とはワンクリック詐欺に通じる危険なものです。

 NHK受信料の評判の悪さは,ワンクリック詐欺への感情と同じようなものです。視聴環境設定の手続きなぞした覚えもないのに,いつの間にかしてしまったことにされてしまうからです。本来,負担金としての受信料なら,視聴者に受け入れられるかどうかは別にして「有料対価型」のような手続きも契約も不要だと思います。しかし,現実には負担金として視聴者に受け入れてもらえる自信がないものだから,自主的に契約したように見せかけている姑息さを感じます。