突貫工事

 20日の能天気なテーマパーク記者会見で小池知事は,環状2号をオリンピック開催までに間に合わせるといいました。でもね,とうにタイムリミットは過ぎてしまったので,小池知事の努力ではどうにもなりません。本気で間に合わせたいのなら,もっと早い段階で決断して工事を発注すべきでした。今頃,トップがこういう宣言をすると,現場は突貫工事を強いられます。突貫工事が品質低下や事故と関りが深いのはご存じの通りで,非常に困るんですよね。

 国土交通省も今年度から作業員が週休二日をとれるように工期を伸ばして発注するという時代なのですが,小池知事はご存じないかもしれません。プロジェクトX風のドラマでは,トップの意気に感じたメンバーが困難な事業を成し遂げますが,現実には,無理がたたって悲劇に終わる場合もあります。あの広島新交通システム橋桁落下事故も,騒音問題で夜間工事が行えなかったため,昼間の突貫工事だったそうです。

 私の経験では,ゼネコンは相当無理がある工期でも仕事がない時期には受注してやり遂げますが,当然のこと忙しい時や,全く不可能なら手を出しません。オリンピックを待つまでもなく間に合うかどうかはすぐに分かるでしょう。

 問題は微妙な場合です。そういう仕事は非常にリスキーです。ある大イベントに間に合わせるため非常に工期が厳しい工事に監理の立場で関わったことがありました。ただでさえ厳しいのに,受注したゼネコンは大事故を起こしてしまったんですよ。幸いにも人身事故としては数人の怪我で済みましたが,物損は甚大で工期内完成が危ぶまれました。即座にイベントの責任者が現場に飛んできて,「もし間に合わないなら,大手ゼネコンと言えども存続の保証はない」というような趣旨の恫喝的なセリフを宣いました。

 その場にいた私もゾッとしましたが,ゼネコンは驚異的な頑張りで間に合わせ,事なきを得ました。ゼネコンの技術力に感心し,頑張りに感謝する一方で,そもそも無茶な要求をしている張本人は叱り飛ばしているだけでいいのかという気分になりました。事故の直接的原因はゼネコンですが,間接的原因というか根本的原因はもっと上流にあります。イベント責任者も間に合わなかったらクビが飛んだかもしれないので,気持ちは分かりますが,小池知事もクビを賭けているんでしょうかね。

 クビはどうでもいいですが,事故では死者が出るんです。