市場環境白書2008

市場環境白書2008

 9年前の環境白書ですが,7ページ以降のグラフを見ると,築地市場の環境の悪さが目立っています。自動車排ガス対策の二酸化窒素,一酸化炭素が環境基準を上回っています。豊洲市場の食品や人間と接触しない地下水と違い,地上の空気中でしかも開放型施設ですので,もろに食品が置かれる環境の値です。ですが,当時,市場を閉鎖したという話は聞いたことがありません。


 それは当然ですね。環境基準は行政目標であって規制値ではありませんから。現状をよくしようとして定めた目標値なので,実際の測定値が環境基準を上回らないほうがおかしいとも言えます。多分,現在は改善されていると思います。

 一方豊洲市場の地上空気はは言うまでもなく環境基準以下です。地下水の環境基準超えで大騒ぎしているのがいかに馬鹿げているかよくわかります。過剰かもしれないけど都がそう約束したのだから仕方ないという,実態はよくても,手続き的に駄目という固い意見もあるかもしれません。しかし,杓子定規にいうのなら,専門家会議の報告書を文字通り読めば,次のように書いてあります。

①地下水中のベンゼン、シアン化合物の濃度が地下水環境基準に適合することを目指した地下水浄化を建物建設前に行う。

 「環境基準に適合することを目指した地下水浄化」であって「環境基準に適合させる」ではありません。また,「移転前」ではなくて「建物建設前」です。そして,これは必ずしも杓子定規な解釈とは限りません。敷地外と繋がった地下水を環境基準以下にすると保証するのはそもそも無理があります。一旦,環境基準以下にしても,外部から汚染物質が流入してくるかもしれません。なので,建設前に,適合を目指した地下水浄化を行い,それが維持されるようにモニタリングを当面続ける計画になっていたのだと思います。

 小池知事はモニタリングが完了していないのに,移転を決定するのはおかしいと言いましたが,平田座長はモニタリングは建物使用後も続ける必要があると確か会議で発言していました。「環境基準」とは規制値ではなく,維持管理を通じての目標値と考えるべきだと思います。