改革って大変だよ

 随分昔になりますが,浜六郎氏が厚生省研究班の報告の間違いを指摘したことがありました。タミフルによる異常行動についての廣田班報告についての指摘でした。この報告では,タミフルを投薬された患者が服用前に起こした異常行動を投薬されなかった患者の異常行動として処理していましたが,この処理は誤りだという指摘で,一見すると,奇妙な批判です。指摘したのが浜六郎氏だったこともあって言いがかりのように見えました。しかし,この指摘は正しかったのでした。リンク先のNATROMさんが分かりやすい解説をしています。他にも,廣田班報告の誤りの指摘はありました。

「タミフルにより異常行動が半減するという厚労省解析は誤り」とする浜六郎氏の指摘は正しい

 この問題について,私は最初,投薬群に服用前の異常発生を含めるのはやはりおかしいから修正したほうがよいのではないかと考えました。研究班の投薬群の服用前の異常行動発生数だけを,非投薬群に移動するのは異常発生率算定の分母が不足するので,間違いだとしても,投薬群の異常行動数から服用前の異常行動数を除外すればよいのではないかと考えました。しかし,除外も間違いなのは,NATROMさんの解説からも分かります。投薬群から服用前の異常行動を削除すると,異常行動率は,150/950=16%になりますが,非投薬群は200/1000=20%と違ってしまい,やはり仮定に反するからです。この原因は,異常行動を計測した時間が投薬群では18時間に対して,非投薬群では24時間と異なってしまったからです。つまり同じ条件の比較になっていません。

 理想を言うならば,投薬群では服用してからの24時間の異常行動をカウントすればよいのですが,服用までの時間がバラバラですので,現実的には困難です。そのような現実的な困難のために,服用群と非服用群の比較ではなくて,投薬群と非投薬群の比較という当初の調査計画になっていたわけです。それを事後的に服用群の異常発生率を得るように「改善」しようとしたため,異なる条件の比較になったしまったのでした。

 なぜ,今頃こんな古い話をしているかというと,改善のつもりで計画を安易に変更すると,落とし穴があると言いたいからです。厳密に計画された実験計画や,臨床調査では事後的な変更は,恣意的な結果の操作になりやすく,特に戒められているようです。

 一方,行政分野では,厳密な計画を立てることは困難で,変更があるのが普通ですが,安易な変更は慎むべきということは同じです。特に大規模プロジェクトには多くの人が関わり,並々ならぬ労力をつぎ込んで計画が作られています。途中から引き継いだ数人で短期間に改善案を提出できると思うのは傲慢だと思います。自分の能力を過信するだけでなく,先人の仕事を,杜撰な計画だったと貶すに至っては,無礼千万です。

小池都政は「都民ファースト

「一度決めたことだから」
「もう作ってしまったのだから」
「既定路線だから」
何も考えなくてよいという都政は行いません。
これまでの決定等で,
都民ファーストに基づいていないものは,
都民目線で情報を公開し,経緯を明らかにし,
都民の利益を第一に考え,時に政策を変更する。

 大変,素晴らしい方針です。ただし,政策を変更するときは,先人以上に考えなければならず,先人への私怨が動機などというのは論外です。市場問題PT委員による築地市場改修案はやっつけ仕事だし,文芸春秋の小池知事の寄稿文からは私怨がにじみ出ているように感じました。