築地市場改修案(小島私案)の採点

 時間稼ぎの提案にしかみえませんが,一応,ネット上の突っ込みに,私の気づいた点を加えて採点を試みました。

P2 [総合的判断]

●「築地改修案も,多くの建物は新築。耐震性能良し,アスベスト除去,品質管理機能も向上。」としているが,使いながら改修の実現性が極めて怪しい。例えば,使いながら改修で必ず問題になる,利用者動線と工事動線錯綜の検討が一切されていない。 
●築地改修案の維持管理費は,通常のコスト。市場会計10〜20億赤字(豊洲の10分の1)としているが,開放型の現状の維持管理費をほぼそのまま用いている。一方で,コールドチェーン化するとしているが,到底無理。

P4 [築地市場改修案]

●改修が成功するための条件は,「築地の人々が,築地で営業を続けたいという気持ち」これがどれだけ強くあるか,とは,使いながら改修では築地の人々に大きな負担がかかるが我慢しろという意味にとれる。成功しない場合は,我慢できなかった築地の人々の責任と言いたいのか。
●「建築技術的には,何ら問題はありません。できます。」というのは,コストや工期,利用者の負担を無視すればという意味にとれる。建築技術的には日本にブルジュ・ハリファ建設も可能だが,現実に行うには技術以外の諸条件が整う必要がある。
●過去の築地再整備は種地が確保できなかったためとしているが,改修私案の種地は,勝手に場外を使っており,何の保証もない。
●多くの業者の要望を調整する仕切り役が必要だが,私案説明会が関係組合を分裂させてしまった。

P10〜 [建替えステップ]

●水産 食堂・加工場の仮移転先が場外。オープンしたばかりの中央区築地魚河岸を追い出すというずうずうしい計画。
●工事用車両動線のみで,施設利用者動線が記載されておらず,交錯の危険あり。今でさえ交通事故が多発しているのに。

●水産 食堂・加工場の仮移転先が他の施設から工事車両動線で分断されている。

●仮設駐車場の仮移転先がない。解体後新築までは駐車場が使えない。

●新水産卸売棟(旧仲卸売り場)の周囲を他の建物で囲まれており,工事用重機のアクセス不能。使用中の建物上空から資材搬入するのは危険。

●屋上駐車場アクセスのスロープが見当たらない。

●冷蔵庫棟,加工棟がちゃっかり将来計画になって,予算に計上していない。

●水産仲卸棟と卸売棟の間に事務所が挟まり,連絡を分断し,事務空間が無窓になっている。
●新機能対応の施設が見当たらず,現状の配置を入れ替えただけの計画。
●青果部門が随分狭くなったように見えるが,了解得られるのか。
環状2号線用地にあった施設が行方不明。
●設備改修の考え方が不明。各棟バラバラか,統一的に行うか。
●改修工事中は,環状2号線の暫定道路も工事不可。改修完了後も,地下に潜るだけで暫定道路計画とあまり変わらない。急カーブのクランクは危険。市場に接続せず利用できない。

P31 [建替えスケジュール]

●工程表では,各棟の着工直前にそれぞれ設計するようになっているが,独立した棟では可能でも,一体につながった建物なので手戻発生のおそれあり。

P32 [事業予算(案)]

●事業予算 新築と違い改修工事は改修内容によって工事費は全く違うので平米単価で概算不能。単価の根拠不明
●アスベスト処理などの特殊工事の見積もりがない
●仮設を除いた最終的に残る面積は14haにしかならず,現状の28haから半減している。700億強で可能なからくりはここか?この面積で総事業費734億円を割れば,平米当たり50万円超で,高いとケチをつけた豊洲並みになるが,使いながら改修の仮設を含むためで,新築部分の単価は平米35万円。

P33 [豊洲市場は,高級ホテル並み単価]

● 下記の過去記事参照。

高級ホテルは客室あたり単価は高いが,平米単価はそれほどでもない

P38 [東京駅丸の内駅舎]

● 駅の移転は軌道の移設も伴う都市改変大事業になり,そもそも選択肢にない。
 
P48 [豊洲用地の価格評価の例]

容積率変更については,過去記事参照。財源確保のため容積率を変更するなどという暴挙が許されるはずがない。

都市計画をなんと心得ておるのじゃ

P54 [築地改修案の市場会計への影響]

●「市場お営業以外の営業努力(新しいビジネス)で対処できる可能性がある。」としているが,公設市場が行ってよいことか。もし許されるなら,市場という土地利用効率の悪いビジネスから撤退し,豊洲ヒルズと築地ヒルズにするほうが儲かる。JRのように民営化しなければ不可能なアイデア

P57 [土壌汚染対策の安全]

●現在の築地市場が「土壌汚染のない土地」,「環境省令で定める基準を超える特定有害物質による土壌汚染がない」は,ウソ。調査していないだけで,調べれば豊洲以上の汚染の可能性が高い。

P61 [安全と安心]

●有害物質の例として遺伝子組換(「替」は誤字)え大豆をあげている不見識。「安全でも安心できない」の例として遺伝子組換えは妥当だが,「安全でないので安心できない」にすり替えている。
●「法令上安全」でも「安心」を感じない人に説明し,不安を解消すべき立場にもかかわらず,「※無害化された安全な状態」ではないと誤解させ不安を煽っている。

P62 [豊洲で東京都が行ってきた土壌汚染対策]

●地下水の環境基準達成ができなければ,「大気中へ揮散した物質の吸入、生鮮食品への付着」によって健康被害をもたらすかのように誤解させる酷い説明。実際は,環境基準の110倍の地下水でも大気中に揮発する量は環境基準以下で,都内の外気より小さい。生鮮食品への付着に至っては全く無視できるレベル。

P63 [伺いたいこと]

●「築地ブランド」とは観光客向けに過ぎず,市場のノウハウではなくて,銀座に近くて便利というだけのように読める。市場の人に失礼。

採点不可