築地再整備は手続き的にも容易ではないのは,考えて見れば分かりそうなものですが,物分かりの悪い移転反対者のために,足立議員が質問してくれました。豊洲移転は都議会が認め,農水省他の関係官署と認可等の調整をし,補助金ももらい,跡地利用についても約束し,施設も完成し,さあ引っ越そうという直前にちゃぶ台返しをしたのですから,そりゃ大変です。それでも,小池知事がちゃぶ台返しをしたのは,本人の弁によれば,食の安全が脅かされるおそれがあるからで,実質的な危険があるのなら,手続き的に面倒でもやり直す必要があるということでした。なので,前述の諸々の面倒な手続きのやり直しや補助金の返還,違約金の支払いも覚悟の上だということなんでしょう。でも,前提の食の安全云々が否定されてしまったんですよ。
盛土騒動の当初から,実質的な危険はないどころか地下ピットはむしろ安全を増すのではないのという技術的な反論があって,私の直観もそうでした。それに対しては,盛土をすると約束したのにしなかったという手続き的な不備があるという再反論が多く見られました。そうであれば,面倒でも手続きをやり直せばいいのであって,すぐに着手していれば,もう半年過ぎているので,今頃は移転出来ていたのではないでしょうか。
でも,小池知事は本当に危ないという懸念も拭えなかったようで,専門家会議で確認してもらったわけですが,ほぼ安全宣言がだされました。これでやっと,手続きに取り掛かるかと思ったら,なんと,安全だけど安心じゃないと言い出しちゃいました。食の安全はどうなっちゃったんですかね。「気持ちの問題」なのかもしれません。
専門家委員会の判断が出た時点で,「実質的な危険があるので,手続き的な障害は厭わない」の前段は否定されましたが,選挙まで,同じことが延々と繰り返えされるような不吉な予感がします。
・盛土がない危険だ
イヤ大丈夫,むしろ安全
・そうだとしても手続きの不備がある
じゃあ,すぐやれ
・実質的な安全の確認後だ
確認されたぞ
・安全でも安心できない。築地なら危険でも安心できる
築地再整備は過去に市場関係者の反対で破たんしている
・今度は協力する
築地再整備は手続き的にもやり直し
・やり直せばよい,盛土がないのは危険だ
以下,都議選まで繰り返し
ところで,豊洲の手続きと築地の手続きでは大きな違いがあります。豊洲の手続きで問題になっているのは,都の環境アセスや専門家会議の提言の扱いで,ほとんど東京都の判断ですむことばかりです。地下水を環境基準以下にするという過剰な目標は東京都が勝手にしているだけで,国(農水省)との約束でも,法的規制でもありません。書類の修正ですむ話です。一方,築地再整備の手続きは国(農水省や国交省)の法規制と関わります。単なる手続きの修正では済まず,補助金返還や,築地跡地利用計画関係者との契約変更や違約金やら場合によっては損害賠償請求もありそうです。動き出した事業をひっくり返すのは多くの関係者に被害と迷惑をかけます。八ッ場ダム中止騒動が思い出されます。
さらに,本当に手続きの不備があったのか調べるほどに怪しくなってきました。専門家会議の「対策の基本方針」に述べられている盛土を行わなかったことや,地下水環境基準が守られなかったことが重大な約束違反のように言われます。しかし,盛土については,基本方針段階から実施計画段階での改善程度の変更です。法的な規制ではないので,専門家会議の委員が納得すればすみます。その説明不足はあったかもしれませんが,その程度の話じゃないでしょうか。そして,地下ピットの換気をするということで,専門家会議は決着したと思います。*1
地下水環境基準越えについては,基本方針をよく読めば移転を中止するような問題ではないことが分かります。確実に環境基準以下にするというのは,工事着手前のことで,それは達成し確認されています。将来のことは変動する自然の地下水なので,そもそも保証できるものではなく,あくまで目標です。だから,モニタリングを行ない確認することにしていたわけでしょう。モニタリングは移転後も行う計画だったのですから,環境基準越えも想定内とも言えます。その場合の対策も考えてあり,砕石層の設置や地下水位管理システムもその一つです。基本方針には環境基準越えどころか,排水基準越えの場合の対応も述べてあるのですからね。