築地市場再生計画私案

 私は,築地市場に公設市場としての公共性を求めすぎたようです。少なくとも,仲卸は民間業者ですから,利益追求して当然です。東京都の組織である市場も,頑なに公共性にこだわるのは時代遅れでしょう。今はあまり流行りませんが,一時は役所も民間の発想を取り入れて業務改善すべきだと盛んに言われていた時代もありました。役所が儲けて悪いことはありません。

 こんなことを考えたのは,橋本治の「上司は思いつきでものを言う」を思い出したからです。あの本の中で「埴輪製造販売会社」の話が出てきます。この会社は古墳の副葬品としての埴輪を製造販売しているのですが,業績が思わしくありません。業績不振を打開するアイデアを出せと命じられた社員が,今時,古墳を作る人はおらず,業績不振は当然と考えて,副葬品ではなく部屋に飾る美術品として売り出すことを提案します。しかし,上司は「埴輪というものは神聖な副葬品なのだから,美術品として売り出すなどというのはいかがなものか」と難色を示します。会社の理念というか存在意義に反すると堅いことをいうわけです。じゃあ,どうすればいいのだと社員が心の中で思っていると,「そうだコンビニを始めよう」と上司は思い付きを言い出します。そして,あれよあれよという間に,会社はコンビニを始めることになります。

 この話の石頭だか適当だかわからない上司と,公設市場に公共性を求める私は似た者同士だと気付きました。今時,公設市場なんてのは埴輪販売並みに時代遅れなのです。市場も新しい発想が必要です。以前は,公設市場への一般人の入場は制限されていました。しかし,築地市場の取扱量は減り続けジリ貧状態でしたので,試しに開放してみると,観光客に大人気となりました。メディアでも取り上げられ海外からも観光客が訪れる,マグロの解体ショーは好評です。今や,築地市場は市場ではなくて,市場の雰囲気の観光地と言えます。この一般人の反応を見逃してはいけません。世間は気分や安心で動くのです。

 よく考えてみたら,市場問題PTの座長私案も同じ発想だと気付きました。流石は座長です。あの再整備案には,カフェなどの観光客向けの施設が併設されています。市場としてみれば,車はどこに待機するのかよくわからないなど,どうしようもない代物ですが,猥雑で昭和の匂いのするテーマパークというのが本来の姿だったのです。座長は施設使用料を2倍にする提案をしていて,仲卸の反発が心配でしたが,テーマパークのテナントならもっと高くてもよいくらいです。

 市場機能を特に求めなければ,冷蔵設備なども不要ですし,建屋も書割で間に合います。予算的にも,800億円あればおつりがくるんじゃないでしょうか。それだけの投資で大幅な利益増を望めます。わかりやすく言えば,全部場外市場にしてしまうのです。場外でも市場は市場です。それから,コンビニも忘れてはいけません。
(2017年4月1日作成)