東京都の情報秘匿と漏洩

 豊洲市場移転の手続き的問題として,環境アセスメントのやり直しと,農林水産大臣の認可が心配されていました。後者については,2月16日の総務委員会において決着しました。足立康史議員の質問に関して農水省が「御指摘の土壌につきましては、土壌汚染対策法への違反が認められない場合、関係法令の一つとして、認可の障害になるとは考えてございません」と答弁し,土壌汚染対策法への違反はないので終了です。ところが,当事者の東京都は自ら確認したかどうかも定かではなく,総務委員会の答弁にも反応がありません。

 一方,前者の環境アセスメントは東京都自身の判断になるのですが,結論はおろか検討経緯も聞こえてきません。どうなっているんでしょうか。確かに,評価は盛土前提で行われているので,修正が必要といえば必要かもしれませんが,私は形式的な修正で済むのではないかと思います。しかし,やり直しだと1年以上かかるという噂も流れていましたから,見通しぐらい説明があってもいいと思います。

 形式的な修正で済むと考える理由は次の通りです。そもそも,環境アセスメントとは,開発行為の事業が環境に与える影響を評価するもので,環境が事業に与える影響を評価するものではありません。汚染された土壌という環境が市場に与える影響は,専門家会議が扱う問題であって,環境アセスメントで評価することではありません。ただし,原状の敷地の形状を変えることによる環境への影響は評価しなければなりません。例えば,土壌を掘削したことで,地下の汚染物質が大気中に放散されるという影響があるかもしれません。あくまで,大気環境への影響であって,市場施設内の業務環境への影響ではありません。

 では,盛土がなくなったことによる環境への影響はどのようなものかというと,無くなった盛土とは,旧地盤面より上部に新しく盛るものです。従って,これが無くなったとしても,原状よりも大気環境が悪化することはあり得ません。はなはだ簡単な修正で済むと思うのですが,東京都は説明しません。

 東京都は,検討の経緯を公表して説明すべきじゃないでしょうか。農林水産大臣の認可については農水省が,地下水が地上の市場機能に与える影響については専門家会議が,建物の耐震性,基準法適合については,市場問題PTや建築主事が次々と結論を出しています。ところが,これらを受けて東京都は判断示しませんし,建基法の検査済証交付については情報すら出しませんでした。それに対して,一人歩きすると誤解を招いて移転の障害になりそうな情報は不思議と漏洩します。まあ,役所の中にはいろんな人が入り込んでいて,排除もできないので,不思議でもありませんが。