地下水環境基準の100倍のベンゼン

豊洲、基準100倍のベンゼン あす専門家会議で評価
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201703/CK2017031802000244.html
過去の調査を検証した結果、採水までの時間の差は、試料の濃度に大きな影響を及ぼしていないとみられるという。

 第1回から8回までと,9回の採水までの時間の違いは大きな影響がないのなら,どちらの測定でも良いということですね。8回までにしろ,9回目にしろ何らかの不正があったという陰謀論は否定されたということで結構なことだと思います。

 さて,そうなると,79倍や100倍という値をどうみるかですが,すでに座長は地上と地下は別だと言っています。その意味は,都市に下水があるからといって都市が危険ではないのと同様,至極当然のことで,このブログでも何度も述べてきたことです。今日,専門家会議があり,どうなるかわかりませんが,その結論を知る前に今までの自分の考えをまとめておこうと思います。

 専門家会議の資料によれば,土壌の対策前の地下水の最高ベンゼン濃度100mg/Lでは,地上の空気中の環境基準値(年平均値で 0.003mg/㎥ 以下)を上回ります。そこで,目標地下水中ベンゼン濃度 0.45〜3.1mg/L(平均的な土壌特性下で 1.1mg/L)以下にすることで,地上の空気中濃度は0.0013mg/㎥と環境基準の半分以下にできるとしています。その環境下の生鮮食料品に付着した水分中のベンゼン
度は飲料水の水質基準の1/1000以下になります。

 目標地下水中ベンゼン濃度 0.45〜3.1mg/Lとは,地下水環境基準の45〜310倍(平均110倍)です。実際の計画はこの目標をさらに110倍厳しくしちゃったわけです。

 なお,この計算は,敷地全面の地下水が環境基準の110倍で,盛土のみでアスファルトやコンクリートはなく,地上の気流が0.625cm/sという仮定です。9回目の調査で79倍を超えたのは1か所で,追加調査で100倍を超えたのは何か所が不明ですが,全数ということはありえないでしょう。

 参考までに,地上の空気中濃度は0.0013mg/㎥がどの程度のものかというと,ちょうど,都内の沿道の濃度と同じです。一般環境では0.0011mg/㎥となっています。平成8年は0.0087mg/㎥ですから環境基準の870倍でした。

有害大気汚染物質のモニタリング調査
https://www.kankyo.metro.tokyo.jp/air/air_pollution/hazardous_contaminant/monitoring_study.html

 この大気中ベンゼン濃度の計算は,地下水のベンゼンと空気中のベンゼンが平衡した状態です。それが,都内の大気中濃度と同じということは,すでに平衡に達しているということで,地下水中のベンゼンは,実質的に地上大気になんら影響を与えていないということではないでしょうかね。実際には,平均で110倍ということはないので,むしろ地下水が汚染された都内の大気中ベンゼンを吸着浄化してくれるかも。