専決事項と専決処分

記者会見 一部内容訂正について  石原慎太郎公式サイト 宣戦布告 
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4 次に、契約書への捺印について申し上げます。
都知事名義の契約書に捺印する印鑑(公印)は、管理する者がいて、捺印する時には、知事自身が押印するわけではありません。その際、契約書が都知事名義であっても、必ずしも、都知事が自ら決裁するとは限りません。

 ある程度の規模の企業になると,契約書に社長自ら押印することはほとんどないと思いますが,決裁についてもしない場合があるのが普通です。というか,契約件数の数からして,物理的に不可能だということは常識で分かるはずです。にもかかわらず,マスコミが石原元知事を攻撃するのは,豊洲移転は重大事であるから,自ら行っているべきだと考えているのでしょう。そして,世間もなんとなくそんな気がしているのかもしれません。なんとなくです。

 実際の行政組織では,決裁に関わる規定が細かく定められていて,石原元知事の説明もそのことを述べています。行政組織では,完全に決定を部下に任せる「専決」や「代決」という制度があります。代決は決裁権者が不在の時に部下が代理に決定する緊急措置ですが,「専決」は最初から部下に任せることが予め決めてあるものです。それでも決裁権者の名で行われます。契約書は都知事の公印が押されていても,市場長の専決事項であったというだけの話です。もちろん,土地購入は重要な事項ですから,事前に知事に方針説明や報告ぐらいはあったでしょうが,手続き上の決裁者はだれであったかというつまらない真相です。

 それに対して,つまらなくない話として,地方自治法の「専決処分」の規定があります。こちらは,「本来、議会の議決・決定を経なければならない事柄について、地方公共団体の長が議会の議決・決定の前に自ら処理すること」です。専決処分は長だけでなく,その下位の指定された職員でもできます。

 さて,築地から市場への移転は議会が決定しており,中止や延期するとなると議会の議決が必要ですが,小池知事は,独断で延期しました。果たしてこれは専決処分なのでしょうか。地方自治法第179条では「特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき」と,第180条では「軽易な事項で、その議決により特に指定したもの」が専決処分可能です。豊洲移転の場合,第180条ではないのは明らかですので,第179条に該当するか否かが問題になります。

 延期の理由は食の安全に関わるかもしれないからという「疑惑」でした。「疑惑」であれば,移転した後で解明しても遅くはありませんし,仮に盛土が必要だとしても,後からでも可能です。緊急性があるとは思えません。いや,健康被害が生じてからでは遅いという意見もあるかもしれませんが,この騒動の初期段階で健康被害の心配はないことは専門家会議座長も発言していて,単に手続き上不備の問題になっていました。手続き上の不備なら,手続きの是正や関係者の処分をあとでやれます。

 移転延期による被害は,市場関係者への補償,都市計画やオリンピック運営への悪影響など重大です。百条委員会が喚問すべきなのは誰かな。