暗示にかかった新聞

 今朝,いきなり残念な気分になりました。「石原氏は責任を回避するな」というメジャー新聞の社説が目に入ったからです。都の決定の責任がトップである知事にあるのは当たり前ですが,メジャー新聞はそんな当たり前なことを聞いているのではなくて,「犯罪の有無」を問うているつもりなんでしょう。しかし,「犯罪」があったという証拠は何も提示されていません。小池知事から「犯罪があった」という暗示をかけられているんじゃないでしょうか。

問「汚染された土地を買った責任は?」
答「汚染は浄化によって安全にできると専門家が判断したので買った」

 この問答には微妙な行き違いがあります。問う側は「犯罪」があったという前提でその責任を言っていますが,答える側は「犯罪」はなく,正しい決定をしたが,専門的な事柄なので専門家の判断によったと言っています。この答えを聞いて新聞は,「犯罪」の責任を専門家に転化する責任逃れという印象を受け,その結果,「石原氏は責任を回避するな」という社説の表題になったのでしょう。

 また,トップである知事自ら,売買交渉や事務的な作業を行うはずもありませんが,「犯罪」があったはずという思いこみがあると,その責任を部下に擦り付ける尻尾切りだと感じるのだと思います。

「責任」という言葉は要注意です。瑕疵担保責任とは,もし瑕疵があれば賠償しなければいけないという意味で,瑕疵があるという意味ではありません。しかし,瑕疵が存在する状況で使われることも多いので,あいまいになりがちです。石原氏は瑕疵担保責任はあるが,瑕疵はないと答えていますが,新聞は両者の区別をあいまいにしたまま,瑕疵があるという結論に持っていこうとしているわけです。

 豊洲騒動ではまず,「危険」が存在するという風評を小池知事が立てました。その疑いは専門家会議の基本方針と実際の工事の一部の違いから発していますが,その違いは「危険」をもたらさないと専門家会議で明らかにされました。しかし,一旦たてられた「危険」の風評は消されないままです。そして,その想像上の「危険」をもたらした想像上の責任を石原氏が問われているわけです。

 想像上の「危険」をもたらした責任は小池知事等にありますが,小池知事の暗示にかかってしまった新聞は現実の「危険」をもたらした「犯罪」の責任が石原氏にあると疑っているようです。

 小池知事の発言には「印象」という言葉がよく出てきます。「事実」よりも「印象」や「風評」を駆使する政治家で,メジャー新聞やTV報道と相性がよさそうです。