居住地ふるさと納税

 墨田区ふるさと納税返礼品があるんですね。昨日の朝,日テレが紹介していました。ふるさと納税とは,居住地の都市から税収の少ない地方自治体へ税を再分配する制度だと思っていたので,違和感を感じました。それとも墨田区は財政難なのでしょうか。

 少しおさらいをすると,ふるさと納税とは地方税法第37条に以前からあった寄付の規定に追加改正したものです。応援したい自治体に寄付をすると,自己負担額2000円を除いて,居住地の住民税や所得税の控除という形で戻ってきます。結果的に,実質的な寄付は2000円だけで,残りは居住地から応援したい自治体へ納税先を変えたのと同じになります。ふるさと納税という通称はそれ故でしょう。これだけだと,別に評判になるような要素はありません。

 しかし,ご承知のとおり,寄付を受けた自治体が感謝の気持ちとして返礼品を送り,それが2000円以上の品なので,差し引き,お得だとして話題になりました。返礼品は自治体が勝手にしているだけで,法の定めはありませんが,餌で釣っているだけでいかがなものかという批判がある一方で,都市部から税収の少ない地方への税の再配分効果があり有意義だという評価もあります。

 さて,墨田区も返礼品を送っていると聞いて,ふと,居住地への寄付はできるのだろうかという疑問が浮かびました。もし可能なら,都市から地方への税の再配分という意義はなくなり,単なる節税の道具になってしまいそうです。そこで,総務省ホームページを覗いてみました。QAには「ふるさと納税を行うことができる自治体には制限はありません。」と書いてあります。ただ,居住地寄付が出来ないのは言うまでもないこととして,省略されている可能性もあります。なので,元の地方税法37条の二を確認してみましたが,寄付先を制限するような記述は見当たりません。あえていえば,「当該納税義務者がその寄附によつて設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益が当該納税義務者に及ぶと認められるものを除く。」というただし書きがありましたが,微妙です。

 さらに,居住地ふるさと納税で検索してみると,五泉市ホームページのQAに「自分の居住する県又は市町村に寄付することができます。」とはっきり書いてありました。答えは分かったのですが,単なる節税の道具ではという疑問は大きくなりました。ですが,この疑問については,既に考えていた人がいました。私の疑問程度のことは誰かがとっくに考えているものです。検索の2番目に引っかかった記事に,税の控除は住民税(地方税)のほかに所得税国税)からも行われるので,国から居住自治体への税の再配分になると説明してあります。なるほど,です。

居住地へのふるさと納税拡大の予感  偏屈たぬきのへそまがり投資日記
http://plaza.rakuten.co.jp/hananoyama/diary/201505050000/

 考えてみれば,もともと寄付の規定なので,居住地寄付を制限する理由はありません。しかし,釈然としない気分は残りました。ふるさと納税する人は,返礼品目当てであって,寄付している意識はなさそうだからです。そうであっても,結果的に自治体の税収増になっているからよいのかもしれません。ただ,財政難の自治体よりも,魅力的な返礼品のある自治体ばかりが潤いますね。

 では,返礼品を止めればどうでしょうか。2000円を自己負担しても良いという人は制度の目的を理解していると思いますが,そんな人はいるんでしょうか。実はちゃんといるんですね。総務省自治体へのアンケートでは,返礼品のない自治体へもふるさと納税は行われています。でも額は少ないです。

 本来,寄付は個人の意思で行うもので,税の再配分は行政の仕事なので,別物です。しかし,行政目的のために,主旨の違う法律の微修正を行って利用することはテクニックとして良く行われているようで,ふるさと納税もその一例という感じです。正攻法ではなく技巧的な奇策といったところです。奇策が成立するには表立って言えない裏の作戦がありますが,それが返礼品なのだと思います。裏の作戦なので法律には書けません。でも返礼品がなければ効果は薄いです。そして,裏の作戦なのに大々的に宣伝されています。こういったところが,釈然としない理由かな。