ミスリードによる豊洲市場移転住民投票 

豊洲移転問題】小池都知事 住民投票で責任回避?
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 責任回避どころの問題じゃないと思いますよ。住民投票という直接民主制が必要になのは,すべての住民の重大な利害に関わる場合です。では,豊洲市場への移転が東京都民の重大な利害に関わるかと言えば関わりません。*1汚染土壌が市場で扱う食品に影響を与えることは一切ないからです。それは専門家が断言しています。しかし,小池知事のアナウンスによって,食の安全に関わるかのような誤解が蔓延し,なんとなく住民投票案件のような空気になりかけています。

 実際のところ重大な利害が関わるのは,都民ではなくて市場関係者です。そして関わる理由は土壌汚染やら施設の耐震性や機能ではなく,移転に関わる関係者の費用負担や移転そのものの影響です。債務超過で負担できない関係者は移転すれば廃業せざるを得ませんし,築地という地の利の恩恵を強く受けている関係者は移転で大きな打撃を受けますから,重大な利害に関わります。一方,移転によって問題を解消できる関係者は移転に期待しました。そして,その利害が関係者間で一致しなかったため政治問題化しました。

 東京都は市場関係者間で意見を調整して結論を出さない限り,移転にするか現地再整備にするか決められないとボールを投げました。ボールを投げられた市場関係者の意見はなかなかまとまりませんでしたが,最終的に住民投票ならぬ市場関係者投票で移転に決定したわけです。

 こういう過去の経緯を知らされることなく,また市場の機能や抱える問題も知らず,食の安全に関わると誤解した都民の住民投票によって移転の是非が決定されるかもしれません。市場関係者はたまったもんじゃないでしょうね。

 この状況を例えれば,次のようなものかもしれません。

 ある難病の治療法の認可が議論になっていた。認可の是非は医学の専門的知見と難病患者の意向によって判断しなければならない。ところが,その治療を受けた患者から一般人へ感染が広がるというデマがある政治家から流れ,国民投票によって決定されることになった。治療に期待していた患者の失望は計り知れないものであった。

*1:正確に言えば交通渋滞解消,排ガス抑制などで関わりはあります。