テストの解釈

読売が「読解力が危ない」という記事を連載しました。この記事の「中学生の読解力テストの正答率が45%」という部分が話題になっています。

 戸田市は昨年2月,人工知能(AI)の研究で知られる国立情報学研究所新井紀子教授らと,市立中6校の生徒計340人の基礎的な読解力を測るテストを実施した。その結果,4人に1人は問題文を正確に読めていなかった。問題によっては正答率が半分程度やそれ以下のケースもあった。

 中学生対象の戸田市のテストの問題例

教科書の一文を読み( )に相当する解答をA〜Dから選ぶ

Alexは男性にも女性にも使われる名前で,女性の名Alexandraの愛称であるが,男性の名Alexanderの愛称でもある。

Alexanderの愛称は(  )である。

A Alex 45%
B Alexander 12%
C 男性 9%
D 女性 33%

 私は,紙面で読みましたが,このテスト結果は,読解力よりもやる気や注意力不足じゃないのと感じました。子どもはテストに真面目に取り組むとは限りませんし,大人の私だってアンケート調査には設問もろくに読まずに適当に答えることが多いです。別にアンケートや調査に協力しなければならない義理もありませんので。

 実験や調査結果はいろいろな解釈が可能なので,心理学の実験などでは本命の解釈以外を消去するための工夫や追加実験を行っています。一つの解釈に絞るためには慎重な検討が必要だからでしょう。

 それで,思い出すのが掛け算順序教育です。「3人にみかんを4個ずつ配る」というテストに,「3×4」と立式する子どもは,何を考えているのでしょうか。順序教育をする先生の中には,問題文に出てくる数字を機械的に式に入れているだけで,「ひとつ分」や「いくつ分」という意味を理解していない,と解釈する人がいます。その可能性もありますが,単に,順序ルールを軽視しているだけかもしれません。

 順序ルールが算数教育界のローカルルールに過ぎないのではなく普遍的なルールならば,順序ルールの軽視は由々しき問題です。しかし,さすがにそういう先生は少なく,あくまで教育上の便法とおっしゃる人が多いです。つまり,「ひとつ分」や「いくつ分」という意味を理解させたり,理解していることを確認する方法というわけです。

 しかし,残念ながら新しいローカルルールを使うテストでは,肝心の意味を理解していないのか,単にローカルルールを理解していないのか判断できません。にもかかわらず,意味を理解していないという解釈しか考えないわけです。理解度測定のためのローカルルールはまずそのルールを理解させる必要があります。理解度測定の方法は,先生が工夫して考えなければなりませんが,生徒にローカルルールを覚えさせるという余計な負担を強いています。でも,ローカルルールを覚えているという保証はありません。そうなるとお次は,ローカルルールを理解させるためのメタローカルルールの予感。

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