三浦九段騒動の報道と風評

三者委は義務を果たしたか 三たび三浦九段冤罪事件について
http://www.47news.jp/47topics/himekuri/2017/01/post_20170120191457.html
三者委は組織の論理を優先し、三浦九段の不利益、とりわけ内面の苦しみを全く顧慮していない。前回の記事「三浦九段は何を失ったのか」で、門外漢ながら彼の苦悩について想像したのは、それなしにこの事態について語ることは許されないと思ったからだ。

 第三者委員会報告後はこういう記事が増えました。しかし,報告前の風評は三浦九段クロ説が結構強くありました。確かに,専門家である棋士も疑っていましたし,不信行動などそれらしい印象はありました。しかし,それはあくまで印象に過ぎません。いわゆる「訴追者の誤謬」の可能性については以前の記事でふれました。三浦九段に苦悩を与えたのは将棋連盟だけでしょうか。

三浦九段の不正の確率
http://d.hatena.ne.jp/shinzor/20161020/1476952363

 連盟の出場停止処分理由がソフト使用であったならば,第三者委員会の無罪判定を待つまでもなく,連盟の処分は間違いでしょう。なぜならソフト使用は疑惑に過ぎなかったからです。疑わしきを罰したという連盟批判は当初からあって,第三者委員会の報告が出たからといって,今さら論評することもないと思います。

 ところが,そもそもソフト使用は出場停止理由ではありませんでした。連盟が悩んだのは,疑惑棋士を出場させることで,竜王戦がイメージダウンするかもしれないという営業判断でした。週刊文春が疑惑報道を竜王戦開催に合わせて行うという情報もあり,三浦九段への事情聴取において,出場辞退の申し出があったことから,丸山棋士の代理出場の手配までしていました。しかし,休場届は出されないことになりました。後知恵で考えればこの時点で三浦九段をそのまま出場させればよかったのでしょうが,週刊文春の疑惑記事報道への対応が出来ず,最悪の場合竜王戦途中打ち切りも予想され,「休場届の提出を求めましたが、期限までに休場届が提出されませんでした。」という理由で出場停止にしたわけです。

 この騒動でも連盟判断に大きな影響を与えたのは週刊文春の疑惑報道情報です。報道とそれが引き起こす風評は主にスポンサー収入で運営している連盟には脅威です。不倫疑惑のあるタレントをCMに起用するかどうかに似たところがあるのではないでしょうか。もちろん,タレントと将棋棋士では違いますが,最終的に竜王戦スポンサーからの収入が確保できるかという営業判断の要素が大きかったと思います。

 しかし,単なる疑惑で仕事を干されるタレントや棋士はたまったものではありませんが,報道や風評は一切,そういうことは気にしません。報道は常に悪役を求めていて,今回は将棋連盟と谷川会長に落ち着きましたが,当初は三浦九段だったのではないでしょうか。仮に,出場停止にせず,週刊文書報道があったというシナリオを考えてみるとどうなったかわかりません。何しろ,その時点では真相は不明ですから。連盟が恐れた通り,竜王戦は途中打ち切りになり,連盟と三浦九段は容赦なく叩かれていたかもしれません。どっちに転んでも,報道や風評は容赦ありません。話題の他の騒動でも悪役探しが止みません。