市場問題PTヒヤリングを見て,八ッ場ダムの右往左往を思い出した

 同感である。数多くの入居者が入る建物の意見調整をしてきた経験があれば,だれでもそう思うはずだ。全員が納得する意見集約などありえない。単独の建物なら自由にできるのに,雑居ビルみたいなところは制約が多くて入居者は大抵不満たらたらである。経験がなくとも想像できると思うが,実際は想像以上に紛糾するのである。

 ここまで来て,個別に意見を聞けば今までの不満が再噴出して,収拾がつかなくなること必至である。すべてご破算にして,やり直すというのなら話は別だが,施設は出来上がっており,白紙状態からの意見調整より条件が厳しく難易度はさらにアップする。

 また,設計者が個別の入居者の意見を直接聞いて調整するのは難しい。通常は,入居者の代表(つまり組合執行部のようなところ)が意見を集約する。それはそれは大変な仕事であるが,そのような立場でなければ,個々の入居者を説得するのは無理である。例えば,住宅の家族の部屋の面積配分ですら,家族の性格もよく知らない設計者が采配するのは大変だ。そこは,家族の実態を知り抜いており,予算も握っている母親あたりが強権を発揮して裁くしかないのである。

 市場問題PTはヒヤリングしたが,この後どうするのだろうか。聞いた意見のとりまとめをPTの委員ができるとは思えない。多分,そのまま設計事務所に流すのではないだろうか。ボールを受け取った設計事務所も途方に暮れるだけだろう。やり直すにしても,組合執行部を通すべきだ。伊藤卸組合理事のおっしゃる通りである。