有効寸法

 豊洲地下配管ピットが4.5mの高さがあるのはおかしい,2mもあれば十分という批判がある。その批判が妥当だとすると,ピット2m,盛土2.5mとなるが,二重構造でコスト的に無駄なので,地下室4.5mとなったという珍説を唱える人もいる。

 これらは,前提も含めて間違いである。まず,リンク先の写真を見てほしい。天井付近に大きな梁があるのが見える。人間と比較してみると,1.5〜2m近くのせいがあるだろう。もし,ピットの高さを2mとしてしまうと,そのほとんどが梁で分断されてしまう。人が歩くことも出来ず,点検や修繕更新も不可能である。

豊洲市場の土壌問題 写真特集
http://www.jiji.com/jc/d4?p=tys915&d=d4_bbb

 実は,そのような配管スペースもある。梁を貫通する配管にしてしまうのである。豊洲の場合も一部梁貫通しているのが見て取れる。また,一般階(地上)の横引き配管はそのタイプが多い。ただし,梁貫通出来る配管の径や本数は限られる。また,一般階の点検は下からできるが,地下の場合は,梁で区切られた区画ごとに,上の床に点検口を設けるか,置床にしなければならない。ターレットが走り回る市場では無理だろうし,配管の数からして貫通孔は成り立たない。

 つまり,2mもあれば十分というのは,梁下の有効な空間なのである。人が立って歩けるので,点検も容易である。さらに,梁はピット下にも必要な場合がある。これば基礎梁といい2.0m程度のせいになり,都合,1.5+2.0+2.0=5.5mとなり,4.5mを超えてしまう。盛土どころか,掘削が必要になるのだ。

 このため,豊洲では,基礎梁を1階床レベルに上げて,その下を配管ピットとして,ピット下の梁は無くしているようである。この場合は,ピット部分の柱は細長い柱ではなく,コンクリートの塊の基礎として扱う。その様子は,森山氏のブログに掲載されている断面図からわかる。なお,森山氏のこの記事は構造音痴の建築士であることを露呈しているが,ここでの説明には関係ない。

緊急解説!!豊洲市場の構造設計に疑義アリ
http://ameblo.jp/mori-arch-econo/entry-12190835353.html

 不鮮明で読みにくいが,設計地盤レベル(SGL)がA.P.+6.0mで基礎下はそれより,6m以上低いように見える。つまり,基礎はA.P.+2.0mより下まで食い込んでいるのだ。となると,砕石層もほとんどないと思われる。砕石層は上部の盛土へ毛細管現象で地下水が浸透するのを防止するのが目的だが,地下ピットには盛土層はないのでなくても構わないのだろう。ピットにたまった水はポンプアップ処理すればよい。なお,別の地下水処理概念説明では,建物下の砕石層は深くしているところもある。

地下水管理システムに関する説明資料
http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/pdf/pdf/gijutsu/siryo/18-3.pdf

 建築を考える場合は,必ず図を書かなくてはならない。頭で空間を想像するのはよほどの天才でなければ無理だからだ。実は図でもよく理解できないことが多い。だから建築家は模型で検討するのである。もっとも,配管スペースは2.0mもあれば十分という場合,有効な内法寸法であることは建築専門家でなくても理解できると思うが。