トリック ドラマ版

 「トリック」ドラマ版を今頃見ています。私は、劇場版のTV放映から見始めたので、古いTVドラマ版は見ていませんでした。トリックは、切なさや無力感をくだらないギャグで照れ隠ししているようなドラマです。多くの人が、後味の悪い、救いのない結末という感想を述べていて、私もそう思います。ハッピーエンドじゃない話は,笑いがないと気が滅入りますからね。

 トリックを面白いと思ったのは、私自身が騙されやすくて、インチキ商品を幾度となくつかまされた経験があるからです。幸いなことに私の失敗は数千円のインチキ商品にとどまっていますが、世の中の詐欺は破産や自殺という深刻な事態も引き起こしています。そして被害者が一方的な被害者とは限らず、加害者にもなっているややこしさがあります。詐欺師のインチキを暴くことは、必ずしも被害者を喜ばせるとは限らず、被害者は失望し、別の詐欺師に乗り換えるだけに終わることもあります。詐欺師は被害者の要求に応えている、あるいは祭り上げられているようなところもあります。

 そのような詐欺師と被害者の関係を見ているとやりきれない気分になります。詐欺師を批判しているのに、被害者が傷つき怒り出します。被害者扱いするのがそもそも上から目線なのだと言われるし、かといって他のやりようはないし、救いのない気持ちになります。詐欺師の悪事を暴くのは善かもしれませんが、その一方で、被害者の救いを奪うという悪もなすことになります。この場合の善は悪よりも大きいので差し引き善が残るという単純な計算はできません。自分がなした悪の後始末もしないといけないのですが、大抵できず、無力感と後味の悪さが残ります。

 唐突に国際政治の話になりますが、アメリカは独裁者のフセインを殺し、イラク国民を助けたつもりでした。しかし、その後イラクは混乱が続いており、イラク国民は悲惨な状況になってしまいました。フセインを殺すだけでは何の解決にもなりませんでした。といって、解決策は簡単には見つかりません。ドラマの「トリック」でも解決策は示されないまま終わります。そして、貧乳山田と巨根上田はくだらない掛け合いを演じ続けます。劇場版ラストステージではいかにもドラマらしい山田の犠牲的行為で完結しますが、現実は完結しません。

 詐欺師の批判は得てしてこんなもので、気が滅入る一方です。仕方ないので、その状況を揶揄したりします。揶揄には自分の無力を笑う自嘲も入っています。そういうわけでって,どういうわけかわかりませんが,トリックは好きなドラマです。マジックの種明かしもあるし