■地下ピットと盛土の費用比較
豊洲市場で盛り土をやめた理由http://openblog.seesaa.net/article/441906099.htmlにブクマコメントを書いたら、blueboyさんからI.Dコールでご指摘がありました。
Openブログ管理人さんの、ご意見は盛土よりピットの方が安いというものでした。それに対する私のコメントが次。
杭より躯体の柱や地下を作る方が高いのは常識。逆なら、40m下の支持層まで地下を作った方が安くなる。思いつきによる完全な間違い
blueboyさんの指摘が次。
「地下を作る」わけじゃないですよ。地面を 4.5m 掘るわけじゃない。地上に「4.5m の盛り土を積まない」だけです。「掘る経費がかかる」のではなく、「盛り土の費用が浮く」のです。お間違えなく。
blueboyさんの指摘の通りで、私のコメントでは、地下を掘削してピットを作るように読めます。実際には、A.P.+2.0mの地盤面は露出していて、その上に盛土をするかピットを作るかの比較になります。ですが、それでも、ピットの方が安くなると思います。思うだけじゃ何なので、超概算で比較してみます。用いる資料は国土交通省作成の「平成29年度新営予算単価」です。官庁の予算要求用ですが、どうせ超概算ですから。
http://www.mlit.go.jp/gobuild/kijun_touitukijyun_shineiyosantanka.htm
○ピット案(A.P.+2.0mの上に高さ4.5mのピットを作る費用)
「新営予算単価」は一般的な事務庁舎を想定していて、階高は4.5mもありません。また、地下ピットの外周壁は窓もなく、土圧水圧を受けますので、コンクリート躯体も大きくなります。ですが、安めの見積もりとしてこれを用います。
RC-4(3,000㎡)の躯体単価は70,000円/㎡程度です。
○盛土案(A.P.+2.0mの上に高さ4.5mの盛土を行う費用+杭が4.5m長くなる費用)
杭が長くなる費用も「新営予算単価」のオプション(くい地業)を用います。豊洲市場の工事写真から判断すると場所打ちくいで30から40m程度あるようなので、15,480円/㎡を採用します。4.5m分の㎡単価は、2,400円/㎡程度です。
盛土は土木工事なので「新営予算単価」にはありません。仕方無いので、大体の相場(テキトー)で、立米あたり3,000円とすると、3000×4.5=13,500円/㎡。
合計は、2,400+13,500=15,900円/㎡<70,000円/㎡
特殊な事情で盛土費用が5倍になっても、逆転はしません。考えて見ればわかると思いますが、躯体には手間とお金がかかります。まず材料のセメントや鉄筋の製造には大きなエネルギーが必要ですし、支保工の設置、型枠、鉄筋工の加工、組み立て、コンクリート打設、養生、型枠・支保工ばらし、補修という工程が必要です。もし、地下ピットのようなコンクリート躯体が安ければ、団地などの造成でも、盛土はやめて、人工地盤にするほうが得です。その下を駐車場にでも利用できて一挙両得です。
ところで、盛土費用がどこかに消えたという批判がありますね。その意味が私にはわかりません。少なくとも、盛土のない設計図書で工事は発注されているので建設業者ではありません。だとすると、東京都ですかね。東京都は盛土有で予算を計上し、盛土なしで発注し、その差額が誰かの懐に入ったのでしょうか。そんなことができるなら、今からでも東京都採用試験を受けたいけど、年齢制限でだめか。
悪企みを疑うなら、盛土から工事費の高い地下ピットに変更して予算を組み、工事費をつり上げて、建設業者の利益に配慮したというのがありそうです。
■アスベスト被害
ついでに、blueboyさんからもう一つI.Dコールがありました。Openブログの築地市場アスベストの危惧http://openblog.seesaa.net/article/441874828.htmlに関するものです。
・私のコメント
石綿は主に継続的かつ長期に粉塵にさらされる石綿工場や除去業者の労災問題。一般の人が建物の石綿被害に遭ったのは日本で1人だけ
・blueboyさんの指摘
災害で壊れた建物のアスベスト被害が確認されている http://j.mp/2cg6to5
正確に言うと、災害によるアスベスト被害はまだ確認されていません。将来の被害が心配されているだけです。アスベスト被害の代表である中皮腫は暴露から発症まで30〜40年くらいかかります。粉塵による急性障害は確認されていますが。また、私が一般人の被害と言ったのは、日常的に建物を使っている居住者の被害です。災害で瓦礫になった建物から飛散する石綿とはレベルが違います。災害で被害を心配されているのは、住民ではなくて、災害復旧の作業者じゃないでしょうか。これも労災です。たぶん、住民は避難して瓦礫のある場所にはいません。なお、地震後のアスベスト飛散が最も多いのは、被害建物の解体作業中で、地震直後ではないようです。
また、アスベスト問題では、対策が被害を産む皮肉な現象が心配されています。アスベスト対策で、除去工事が大量に発注され、不良業者が参入して、作業員が被害にあう恐れです。これも労災です。昔、アスベストについて調べたメモが手元に残っています。残念なことに出典を書き忘れていますが、紹介します。間違いがあれば、出典付きで、ご指摘いただければ助かります。
各種環境の石綿濃度
・現在の大気環境 0.1〜0.3f/L
・吹き付け石綿のある部屋 数本〜20f/L
・過去の労働環境 吹付け石綿 数万本/L
石綿含有建材の切断、改築 数千本/L
吹き付け石綿のある部屋と比べても、過去の労働環境の劣悪さはけた違いです。アスベスト被害者は今後も増える予測ですが、それは劣悪な労働環境という過去の負の遺産です。
リスクについては、色々あって、まとめたのが次ですが、違いが結構あって、感覚的にわかりにくいです。
中央環境審議会大気環境部会 石綿飛散防止専門委員会(第4回)
http://www.env.go.jp/council/former2013/07air/y0711-04.html
森永 謙二 委員 提出資料
http://www.env.go.jp/council/former2013/07air/y0711-04/mat02.pdf
とりあえず、日常的なアスベストのリスクの程度については、次のQAの「低濃度リスク」が感覚的に分かり安く参考になるかと思います。
中皮腫・じん肺・アスベストセンター 過去の活動記録
http://www.asbestos-center.jp/pastevents/2009.html
2009年6月4日 石綿に関するリスク Q&A
http://www.asbestos-center.jp/asbestos/risk_qanda090227.pdf
なお、建物のアスベストが原因と疑われる唯一の被害者は、大阪の文房具店勤務の方です。青石綿が吹き付けられた文房具店の倉庫に1日30回以上出入りしていたそうです。
勤務先の壁の石綿が原因 中皮腫で死亡の男性
http://www.asahi.com/special/asbestos/TKY200508220122.html
ところで、築地市場の飛散の可能性のあるアスベストは処理済みではないでしょうか。それに開放空間なので、飛散があっても濃度は高くならないのではないかと。