盛土が足りないと何が問題なのか

豊洲市場汚染対策で都が事実と異なる説明 経緯など調査へ
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160910/k10010680011000.html

東京都の小池知事は、10日、緊急の記者会見を開き、築地市場の移転先となる豊洲市場の土壌の汚染対策とした盛り土が主要な建物が建つ部分では行われていなかったことを明らかにしました。東京都はこれまで敷地全体で盛り土をしたと説明しており、小池知事は「正しくない説明で、訂正したい。都政の信頼回復に逆行する」と述べて、都が事実と異なる説明をしてきた経緯などについて早急に調べることにしています。

 今朝の読売朝刊を読んでこの問題に気づいた。読売には解説図が付けてあり,それを見る限りでは,何が問題なのか,全く分からない。左側の「これまでの都の説明」よりも「実際の構造」の方がより安全と思えるからだ。

 計画では,原状地盤から2mの深さまでの土壌を撤去し,その上に4.5mの盛土をして,その上に建物を建てることになっていた。この意味は,汚染された2mの土壌を撤去し,さらに,その下の土壌も汚染されているので,人や食品を取り扱う建物の部分は,4.5mの盛土で遮蔽し,その上に話して建設するというものだ。

 これに対して,実際の構造は,4.5mの盛土の代りに,配管用の地下ピットで遮蔽している。土とコンクリートで作られたピットでは明らかに後者の方が遮蔽効果が大きい。土壌は地下4.5m以下から汚染された地下水が上部に浸透してくる可能性も有るが,ピットに侵入した地下水はポンプで排水される。また,配管ピットには点検時しか人は入らないし,食品を貯蔵することもできない。

 そもそも,左側の図でも,4.5mの盛土はしていない。基礎のコンクリート分だけ盛土は薄くなっている。盛土の厚さとは,建物の外回りの地表面までを言うのが普通で,どのような建物でも,地表面より下に基礎部分が埋め込まれている。埋め込まずに地表面に乗っている建物はありえない。配管ピットのない建屋でも,建屋下の盛土は4.5mはない。

 「当時、対策を検討した専門家から話を聞くほか、外部有識者らによるプロジェクトチームを設けて早急に調査する」そうであるが,そんなことは既に説明済みではないだろうか。設計の図面は提示されているはずなのである。こんなことに今まで,気付かなかったとはとても信じられない。気づいていたし,別に問題とも思っていないかったのではないだろうか。

 確かに,文字通りに解釈すれば,建物下に4.5mの盛土は残っていない。説明とは違う。ただ,そういうことを問題にするのは,揚げ足取りに過ぎない

 ただし,汚染土壌対策の専門的なことは私にはよくわからない。報道では説明されていない問題があるのかもしれない。即断は禁物である。しかし,今現在,報道されている内容だけからは,危険なことは何も感じない。