事件を作り,美談を演出

海外メディアが内村選手に「失礼な質問」をしたって?いや、それは完全に逆です。
http://blogos.com/article/186813/

 朝日新聞リオデジャネイロ特派員の柴田真宏氏の「この記者はいい反応を引き出しました。」発言が袋叩きに遭っています。このような状況で,柴田氏を擁護する人はいないと思っていましたが,甘かったです。

 長谷川氏のようにあの質問を擁護はしていませんが,今日の読売編集手帳にも微妙な記述がありました。一応,質問柴田氏の発言は「ナントカの勘ぐり同然の質問」と品のなさは分かっているようですが,美しい答えを引き出したとして,結果的に良問だと述べています。

(前略)<世の中に愚問がひとつある。口に出さない質問だ。>尋ねたいことはためらわずに,尋ねなさい,と。なるほどナントカの勘ぐり同然の質問も,ときに美しい答えを引き出すことがある◆「あなたは審判から好意的に見られているのでは?」。内村航平選手(27)に質問が飛んだ。判定は公平だったのか,と。リオ五輪の体操男子個人総合でウクライナのオレグ・ベルニャエフ選手(22)を劇的な僅差で逆転し,金メダルを手にしたあとの記者関係である。◆自分が問われたわけでもないのに,「いまの質問は無駄だと思う」と邪推を全否定したのはベルニャエフ選手である。「航平は伝説の人物。若手はみんな夢みている」。スポーツ報知によれば,喝采を浴びたという。質問者は赤面したはずだが,珍問は結果として良問だったろう◆

 こういうのを読むと,一部のジャーナリストはつくづく,やらせや演出が好きなのだなと感じます。実際のところ記者の質問は隠されていた本音や真実を引き出してはいません。仮に,内村選手が答えに詰まっってしどろもどろになったり,オレグ選手が「その通りだ,採点は不公正だ」とでも答えたのなら,本音を引き出した鋭い質問と言えるかもしれませんが,記者が馬鹿で無駄な質問をしたと世界に知らせただけです。

 多分,体操採点の闇を引き出したというのではなく,記者があえて馬鹿を演じて,オレグ選手の内村選手に対する敬意や友情という美談を引き出したと,言いたいのでしょう。しかし,これって演出された美談ですね。記者が内村選手に殴りかかり,オレグ選手が身を挺して内村選手を守ったという美談です。美談は感動的ですが,そもそも,そんな暴行事件も美談もない平穏な状況の方がよいに決まっています。しかし,それでは記事にならないので,あえて事件を引き起こしたり,美談を演出するのが,一部のジャーナリストは好きなようです。

 世の中きれいごとじゃないんだよと,企業が売らんがために,倫理に悖る行為をすることがありますが,「ジャーナリストは事件を報道するのではなく,作るのである」って聞いたような。