微妙な嘘,あるいは勝手な勘違い

 村中 璃子氏の子宮頸がんワクチン薬害研究班捏造批判に対して,池田教授は取材に「マウスによる予備的な実験で可能性を提示しただけで、決定的な結論だと述べたつもりはない」と話しているそうです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160628-00000030-jij-soci

 池田教授は最初からそのトーンだったのかもしれませんが,メディアの扱いは,薬害を立証する実験という印象でした。牛田班報告はほとんど無視でしたし。

 別の話ですが,水素水を販売している大手食品メーカーは,水素水の効能は謳っていません。明白な嘘や捏造はありません。メディアや周辺が勝手に効能がありそうな情報を流しているだけだと言えます。にもかかわらず批判を浴びています。

 またまた別の話ですが,悪質な訪問販売で「消防署の方から来ました」といって消火器を売りつけるという今では聞くこともなくなった古い手口がありました。この販売者は嘘はついていません。消防署の方角から来ているのですから。にもかかわらずこのような商売は評判が悪いです。

 最後の例に関わる法律に不当景品類及び不当表示防止法があります。この法律では,事実に基づかない「優良誤認表示」「有利誤認表示」を禁止していますが,それ以外にも,「その他誤認されるおそれのある表示」も禁止されています。明白な嘘はなく,消費者が勝手に勘違いしただけという言い訳は認められません。

 この種の問題は,主観的な受け取り方によるので,なかなか微妙です。微妙だから悪用するものも多いのですが,意図的かどうかも微妙です。限られた分野では「景表法」のような法律で微妙な行為も禁止されますが,多くの分野ではグレーゾーンです。グレーゾーンは違法とは言えませんが,倫理的にはどうなんでしょうかね。

 子宮頸がんワクチン薬害研究班捏造に戻ると,捏造かどうかは微妙というか,村中 璃子氏自身が捏造を法的に認めさせることは難しいとで述べています。つまり,法的な決着が目的ではなく,世間に知らしめるためのジャーナリスティックな方便という感があります。このようなやり方は,結局,発端の研究班報告報道と同類という気もします。

 ただ,池田班の研究では決定的な結論はなにも出ていないと池田教授みずからに言わしめたという効果はあったわけです。池田教授の責任問題という二次的なことはともかく,一番の当事者である患者さんにとって,これって結構重要なことだと思うのですけどね。