この落語が何故面白いかを解説するように,この例えが何故変なのかを解説する

財務省の「糞ゲー」と、それを作った人たち、宣伝する新聞
http://togetter.com/li/983261

 不確実性下の中田大悟
 税率変更が経済に影響を与えないって、そういう体系のモデルですからね。経済設定が財政にどういう影響を及ぼすかを見るのが主眼。財政の経済効果は対象外。蕎麦屋に来てラーメン食わせろっていったら只の馬鹿ですけど、この人達が言っていのは、まぁそれと同種のお話ですよ。

 togetterからの引用部分は,東京財団の財政推計モデル批判に対する反論です。専門的見地からは既に色んな意見が出ていますので門外漢の私が追加することはありませんが,一言言いたくなりました。この蕎麦屋の例えは的外れだということです。他の人にとってはどうでもよいことでしょうが,たとえ話を多用する私としては,見過ごせません。

 東京財団モデルへの批判を私なりに簡単にまとめると,「税率アップが経済に影響を与えず,他の税収に影響しないという仮定なら,財政を改善するのは当たりまえだ」です。つまり,仮定がおかしいという批判かと思います。批判者はもう少しまともな仮定をしてくれと,東京財団に注文しているわけです。

 これに対して,「蕎麦屋に来てラーメン食わせろっていったら只の馬鹿」という例えは,悪いのは蕎麦屋ではなく,客であるという状況を表しています。蕎麦屋にラーメンを注文する客が馬鹿なのであって,そもそも蕎麦屋にラーメンを提供する能力はないし,ある必要も無いということです。

 蕎麦屋はそれで構いませんが,東京財団はいいのでしょうか。蕎麦だけでラーメンは出さなくてよいのでしょうか。中田大悟氏が蕎麦だけで十分と考えているのなら,この例えは適切ですが,そうではありません。

 実際には,中田大悟氏はラーメンも必要だが,蕎麦もそれなりに美味しいと,つまり,東京財団モデルも多少は役に立つと言いたいのではないでしょうか。ところが,中田大悟氏の発言を文字通りに受け取れば役に立つ見込みはないのです。

 なぜなら,税率変更が経済に影響を与えないという仮定では,経済は変化しないとするのですから,経済が財政及ぼす影響は知りようがないからです。これは私が言葉尻を捉えただけで,おそらく,経済ではなく税率が直接に財政に及ぼす影響を見るのが主眼,と言いたかったのだと思います。そうだとすると,消費税率変更が経済に影響を与えず,他の税収に影響しないなら,財政を改善するのは当たり前という最初の批判を的外れの例えでかわすのではなく,まともに応えなければなりません。振り出しに戻ってやり直しです。