水素水が売れる理由

 水素水が話題なので,自分なりに状況を要約してみました。

 水素水については,研究中という段階のようです。一部の研究では人体への好影響が認められたと報告しているようです。このため、将来的に医療に利用出来るのではないかと期待され,研究が行われています。この様な研究活動は有意義なものも多いと思います。

 これらの研究についての報道も盛んに行われていますが,将来的な利用を目指した研究の紹介であるなら,問題ありません。また,これらの報道の二次情報がネットや雑誌などのメディアで流れています。情報が正しい限りこれ自体に問題は有りませんが,中には誤解を引き起こしかねないいい加減なものもあります。

 このような状況にも係わらず,早くも水素水発生機や水素水が製品化され発売されています。ただし,医薬品として治験が行われたわけでもないので医薬品ではありません。また研究中の水素水とは随分違っており,健康への効能も不明なので「特保」扱いもできません。効能が無くても機能表示できる機能性表示食品にもなっていません。なぜかというと,機能を担保する水素分子を定量的に表示できないからだそうです。水素分子は時間と共に抜けていくので表示できません,と水素水を販売している会社が自ら言っています。確かに,伊藤園水素水の表示も「充填時水素濃度」です。結局,単なる食品として販売されています。水素水発生機については,活性酸素抑制効果は表示されていますが,健康への効能は謳われていません。

 なお,メーカーは効能を謳っていませんが,一部の販売者は未確認の効能を宣伝しており,摘発されています。また,国民生活センターは消費者に誤解を与えないように,効能を明確にするようにメーカーに要望しています。

 さて,以上の様な状況ですが,不思議なことは,メーカーはなんら効能を保証してない結構高額な商品を消費者が買っていることです。というのはレトリックで,消費者はメディアの情報を誤解して,効能があると勘違いして買っているのだと思います。メディアの情報は消費者自身の体験談も沢山あります。では,消費者の自業自得かというと,そうでもありません。メーカーは嘘は言っていなくても勘違いしやすい巧妙なイメージ宣伝をしています。何ら効果が確認されていない製品を大手メーカーが販売するはずがないという消費者の信頼を利用しているとも言えます。

 人間は常に論理的,科学的に考えるわけではなくて,信頼のようなヒューリスティックな判断をします。メーカーはそれを多分に利用している面があります。サプリメント,栄養ドリンク,機能性表示食品などのイメージ宣伝は合法ですが,信義的にどうかと思います。現状の水素水は,更にその下に位置するのではないでしょうか。