愛煙家は喫煙習慣を広めたいのか,自分が楽しみたいだけなのか

 愚行権という概念も有るくらいですから,愛煙家が個人的に喫煙を楽しむのは認めなければなりません。それとは別に,愛煙家は喫煙習慣が社会にとって必要だと考えているのでしょうかね。例えば前の記事で触れた「喫煙文化」を後世に伝えていかなければならないという使命を感じているのでしょうか。

 もし,そのような使命はなく,個人的に楽しんでいるだけなら,子孫に喫煙習慣を伝える必要はないことになります。であるならば,現在の喫煙者の喫煙は経過措置として認めて,今後,未成年が成人しても喫煙を認めないという法規制も許容できるはずです。自分がたばこを楽しむ権利はあるのですから,反対する理由は有りません。

 あとは未成年が反対するかどうかですが,選挙権がありませんので取りあえず,大人が判断すればよいです。どうしても煙草を吸いたいという未成年がいれば,成人してから法改正運動でもすればよいでしょう。理屈をいえばそう言うことになります。

 でも,理屈だけではないのが人間で,愛煙家は猛反対しそうです。自分が吸えれば良いというものでもないと思います。かといってたばこが人類にとって大切な文化であるとまでは言わないような気がします。多分、喫煙コーナーで世間話をする仲間が欲しい程度ではないでしょうか。だんだんと自分が社会のマイノリティになっていくのは寂しいものです。

 しかしですよ,健康に悪い習慣が社会に蔓延しているのは好ましくないでしょう。公衆衛生の観点から,予防接種や検疫という制限はある程度あるものです。不健康な習慣を持つ自由は認められても,社会に蔓延するのは困ります。ところが,巨大なたばこ産業にとっては社会に蔓延してもらわないと死活問題です。

 喫煙者の多くはたばこ産業の被害者であって,喫煙者の行為の是非を議論しても仕方ないと私は考えています。嫌煙運動の主なターゲットは巨大たばこ産業であり,愛煙家の喫煙を否定しているわけではないと前の記事にも書いたとおりです。ただし,危険なものを食べたい好事家や不健康な喫煙家はあくまでマイノリティでないと社会が破綻します。

 一般観光客を対象としたエベレスト登山パックツアーのようなものは存在しません。一般客に気軽に売りつけるにはあまりに危険だからです。しかも安全だと偽っていればなおさらです。「命を落とす危険があります」と表示したとしても,登山中毒のような病気があったならば微妙です。それはともかく,エキスパートの登山は禁止されていません。パックツアーがないため,すべて自分で手配しなければならず非常に不便ですが,それをものともしない魅力が山にあるから冒険家は挑戦します。

 煙草にもエベレスト登山の様な魅力があるのなら,愛煙家は不便でもたばこを調達して楽しめばよいと思います。エクストリーム登山もたばこも体に悪いですけど、そんなこと目じゃないのですから、不便も同じでしょう。