ハイド町連続殺人事件

 例によって名探偵モウリコゴロウとこなんは殺人現場に出くわした。
「また,君たちか」
 間もなく駆けつけたメグレ警部はウンザリとして言った。そんな言葉は気にもせずに,こなんは現場を観察していた。検屍結果を待つまでなく,被害者の死因は胸をナイフで刺されたための失血死と見て取れた。とりたてて変わったところのない簡単な事件のようである。しかし・・・。

 実は,この一か月の間に事件が頻発しており,今回で5人目の犠牲者であったのだ。いずれも遺留品が多くすぐに解決されると当初は見られていた。普通なら30分,難事件でも前編,後編の都合1時間で解決出来そうなありふれた事件だったのだ。にもかかわらず,捜査は難航しており犯人のめぼしは今だに付いていなかった。

 名探偵モウリコゴロウにはピンときた。一見したところありふれた事件に思えるが,この一連の事件は過去に類例のない難事件,特異な連続殺人事件なのである。タカギ巡査部長の迅速な聞き込み捜査によって,4人の被害者には共通の知り合いであるX氏が存在することが判明していた。そして5件目の被害者も知り合いであった。しかも,X氏と5人の被害者の関係は良好とは言えず,名探偵モウリコゴロウは自分の勘が正しいことを確信した。

 ここで,5件の事件の状況を簡単に説明しよう。

 第一の事件の被害者Aは自宅で毒殺されていた。大量の睡眠薬を飲まされていたのである。自宅であることと,争った形跡がないことから,顔見知りの犯行が示唆された。

 その3日後には,頭部を鈍器で殴られたBが路上で発見された。現場に残されていた凶器のバットに指紋はなかったが,X氏は元高校球児である。

 さらに一週間後には,Cが水死体となってテイムズ川に浮かんでいた。何者かに突き落とされたらしい。X氏は,Cがカナヅチであることを知っていた。

 警察が焦り始めたその翌日には,Dが凶弾に倒れた。この犯行は,捜査陣を嘲笑うかのごとく大胆にも白昼堂々と行われた。Dが自分の車に乗り込もうとした瞬間,数十発の弾丸が降り注いだ。即死である。逃げ去る犯人の後ろ姿を見た目撃者の証言はX氏の背格好に合致した。

 そして,Eがナイフで刺されたのであるが,X氏はナイフのコレクターなのである。

 以上の状況から,名探偵モウリコゴロウはX氏を疑ったのであるが,決定的証拠はなかった。目撃者もいて,遺留品も多く残されているがいずれも決め手とはならない。計画的に見えないありふれた犯行に見せかけた計画的犯行なのではないか。名探偵モウリコゴロウがそのように考えたのはあまりに犯行手口が異なることもある。犯人は頭が切れ,しかも多彩な殺人技術をもつ特異な人物なのであろう。今までの犯罪者とは異なる全く新しい犯人像が浮かび上がるのであった。X氏はまさにその犯人像に重なるのである。

 さて,こなんは例によって既に事件を解決していた。事件の解決よりも,如何にして名探偵モウリコゴロウに種明かしをさせるかに,頭を捻っていた。こなんが効果的な演出を思いつく前に取りあえず,事件の全貌を説明してしまおう。先ず,5人の被害者の共通の知り合いはX氏の他に少なくとも10人はいた。容疑者はX氏だけではなかったのである。そして犯人もX氏だけではなかった。手短に結論と理由をまとめると次の通りである。

 Aは自殺した。こなんが遺書を見つけた。
 Bは通り魔の被害にあった。別件で逮捕されたYが犯行を自供した。
 Cは事故死だった。足を踏み外して転落している場面が防犯カメラに写っていた。
 Dは暴力団組長で,対立する組織の鉄砲玉Zに襲われた。お勤めをすべくZは自首してきた。
 Eこそは,X氏に殺された。凶器のナイフにX氏の指紋が付いていた。

 真実は一つ。犯人は大勢。

 出来の悪いフィクションですが,次のリンク先の記事は実話です。

エビデンス弱い」と厚労省を一蹴した
WHOの子宮頸がんワクチン安全声明 村中璃子 (医師・ジャーナリスト)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5771

声明によれば、ワクチン導入以前から見られるこれらの症候群はいずれも原因が不明な上、関連性のない複数の症状の集合体に名前をつけている可能性もあり、何をもってCRPSやPOTSとするのかといった疾患概念は確立していない。

声明が暗に「エビデンス薄弱」と一蹴した日本の「HANS(=ハンス、子宮頸がんワクチン関連神経免疫異常症候群)」なる疾患も、CRPSやPOTSと同様、疾患概念としての妥当性に乏しい。HANSは2014年から一部の日本人医師が唱えている疾患概念で、子宮頸がんワクチンが、慢性の痛みや疲労感、けいれんや運動障害、月経異常や自律神経障害、髄液異常などありとあらゆる症状を引き起こすというものだ。「症状からして免疫異常による脳神経障害としか考えられない病態」であるとするが、科学的エビデンスはない。

 この記事の表現を借りれば,ハイド町連続殺人事件は,「関連のない複数の被害者の集合体に名前を付けている可能性もあり,何をもって連続殺人犯とするのかという単独犯行概念は確立していない」とでもなります。

 ところで,こなんは都合良く証拠と犯人を探し出しますが,現実の事件ではそう簡単にはいきません。私の盗まれた自転車は出てこないし,犯人も捕まっていません。