可能な人は限られる三世代同居

 安倍首相が,出生率向上を図るため三世代同居を促進する政策を指示しているようです。三世代同居は何となく戦前は多かったようなイメージがありますが,リンク先の表によると,大正時代から三分の一程度で,核家族が半数を超えているのですね。

変貌する家族の姿  一般財団法人国づくり人づくり財団
http://www.kunidukuri-hitodukuri.jp/web/koso8/koso8_column_henbou.html

 さらに,既に江戸時代に拡大家族から夫婦家族への解体が進んでいました。一世帯の家族は4人程度が一番多かったそうです。

江戸時代における農民の家族構成
http://www.kwansei.ac.jp/s_sociology/kiyou/9-10/9-10_ch13.pdf

 三世代家族が日本の伝統などというのは勘違いも甚だしいのですが,よく考えてみれば気付けそうな誤解です。昔は人生50年と言ったくらいですから,直系の3世代が揃う期間は長くはなかったはずです。おじいちゃん,おばあちゃんと孫が長期間同居できるのは,寿命が延びた最近のことです。昔の拡大家族とは,直系家族ではなく,複数の夫婦が同居する形態が多かったそうです。

 また,単純な話ですが,兄弟の夫婦が同居しない限り,三世代同居は長男夫婦しかできません。兄弟が多かった昔は夫婦の核家族が多く,三世代同居が三分の一程度だったのは当然と言えば当然です。

 平均の子どもが2人という現代でも,三世代同居が半数を超えるなどということは不可能で,核家族が中心であることは変わらないでしょう。それに,三世代同居が可能なのは,親と子どもの職場が同じ農業のような場合に限られます。私の様に,地方から上京して働いている人間には無理ですし,三世代同居可能な住居を準備するのも経済的に不可能です。親が裕福でその職業と財産を相続する御曹司ぐらいしか三世代同居は現実味がないように思います。