いろいろ誤解を招きそうな地図

食品の放射能検査地図【海の魚編】(2015年 上半期)
http://news.whitefood.co.jp/news/foodmap/4417/

 ホワイトフード(株)というところが作成した地図ですが,説明が無くて見方が分かりません。立体棒グラフの高さが何を表しているのか不明です。総検体数なのか,検出限界以上の検体数なのか,検査値の平均なのか,はっきりしません。ご家庭で分かりやすく把握していただくことを目的として作成したとありますが,把握しようがありません。

 可能性として次のようなものが考えられます。

1.単に検査した検体数のグラフと言う可能性。当然ながら,福島県は圧倒的に検体数が多いので,それが現れているだけで,放射能汚染の指標にはなりません。これについては出典の厚生労働省のデータを調べたところ違っていました。調べた結果のグラフを下に示します。

2.検出限界以上の検体数のグラフという可能性。この場合も放射能汚染の指標にはなりません。これについても,厚生省のデータと違っていました。

 なお,「検出限界以上の検体数/検体数」もグラフに示しています。これは一応の放射能汚染の指標になりますが,茨城県が一番大きく,千葉県,福島県と続きます。地図とは違います。

3.魚種毎の検出値の平均値を積み上げたグラフの可能性。魚種毎に確認するのは面倒なので,そこまで出来ていませんが,この可能性が高そうです。この場合は「検出限界以上の検体数/検体数」より正確な放射能汚染の指標になります。

 ただし,3.の場合には注意が必要です。福島県,茨城,宮城以外の県の検体数は総数でも数十から数百です。これを魚種別にするとわずかになります。検体のない魚種も多くあります。少ない検体数の魚種では検出限界を超えるものが無い場合が多くなりますし,そもそも検体が無ければ当然ゼロです。それに対して,検体数の多い福島県では,検出限界を超える魚種も増え,それが積み上がることになります。

 つまり,一つ一つの魚種で比べると,検出値の平均値(グラフの色別の高さ)が福島県と他県では同じでも,他県では網から漏れてしまう小数魚種も福島県では捕捉されて積み上げられることになります。実際には,魚種毎の検出値の平均値も福島県が少々高いようですが,いずれにせよ基準値100Bq/kg以下の話です。

 ぼんやり見ていると,福島県の海魚が激しく汚染されているような印象を受ける地図ですが,ほとんどは検体数の多さの反映にすぎないように思います。何にせよ,グラフの説明は書いて欲しいです。