「降圧剤は要注意!」ばかり強調するのは要注意!

降圧剤 は要注意!安易な服用は命の危険? 脳梗塞認知症意識障害 の恐れも
http://kanshoku.org/medicine/depressor/

1960年代には、脳梗塞脳卒中全体の13%程度でしたが、食生活の欧米化などにより増え続け、現在は84%を占めるまで増えています。

脳の血管に血栓ができること自体は珍しくなく、これが即、脳梗塞につながるわけではありません。血栓ができても、人の体は血を送り出す圧力を高めて血栓を押し流してしまうからです。
血栓ができると血圧が高くなるのは、そのためです。
しかし、降圧剤で無理に血圧を下げてしまうと、血栓を押し流せなくなってしまいます。そうなると血栓が居座って肥大し、血管を完全に詰まらせてしまいます。その結果、脳梗塞が起こりやすくなるのです。

 降圧剤は要注意という記事ですが,少々偏った見方ではないでしょうか。確かに60年代と比較すると,脳梗塞の脳血管疾患に占める割合は増えています。しかし,脳血管疾患全体の死亡率は下がっています。

脳血管疾患③ 脳梗塞 日本成人病予防協会
http://www.japa.org/?page_id=6310

 さらに,脳梗塞の死亡率は昭和45年ごろからあまり変化がなく,それに比べて脳内出血の死亡率は平成2年まで下がり続けています。細かく見ると,平成2年から,7年にかけて脳梗塞が増え,それに伴い全脳血管疾患も増えています。これは降圧剤の使いすぎの可能性を示唆しているのかもしれませんが,その後,死亡率は再び下がり,安定しています。総合的に見れば,現在の状況は降圧剤の使いすぎとは言えず,妥当なところではないでしょうか。死亡率の変化は降圧剤だけの影響ではないと思いますが,もし,降圧剤の使用を減らせば,平成2年より以前の状態に逆行し,脳血管疾患全体の死亡率が増える可能性がありそうです。

 食べ過ぎれば肥満になり,小食すぎればやせ衰えます。この様にトレードオフの関係にある場合。どちらにも偏らない良い案配を目指すべきです。リンク先の記事は総合的視点に欠け,肥満の危険ばかり強調しているようなものではないかと思います。

 それに,食事は個人の判断ですが,降圧剤は医師の処方に従うべきです。素人判断を助長するような記事はどうかと思います。

【追記】
脳梗塞が増えた主因は降圧剤でもないようです。

日本における脳卒中死亡の変遷とその理由
https://minds.jcqhc.or.jp/n/public_user_main.php

しかし、その後、好景気とともに食生活が豊かになり、飽食の時代となった結果、現在のように糖尿病や高脂血症が著しく増加し、血管の壁に脂肪がたまって血管が詰まる脳梗塞、いわゆるアテローム血栓脳梗塞(注1)というものが増加してきました。
また高齢化が進み、動脈硬化による心臓病、とくに心房細動(注2)という不整脈が増加して、心原性脳塞栓(注3)というものが増加してきました。