論文ではなくて「論考」ー福島県甲状腺がんの地域差

福島原発事故「がん無関係」に反論 神戸の医師が論考発表
http://www.kobe-np.co.jp/news/iryou/201507/0008241533.shtml 

原爆被爆者の治療に長年携わる東神戸診療所(神戸市中央区)の郷地(ごうち)秀夫所長が、東京電力福島第1原発事故と甲状腺がんの因果関係は「現時点では考えにくい」とする国の姿勢に対し、「不都合な5つの事実」と題した論考を25日、福岡県久留米市で開かれる日本社会医学会で発表する。
(中略)
その上で、国側の主張と矛盾する複数の研究報告を検討。その結果、(1)甲状腺がんの発生率を、県が比較した「避難区域」「浜通り」「中通り」「会津地方」の4地域から市町村別に変えると、福島県の西側3分の1では発生がないなど、明らかに差異がある(図)(2)

 色分けした図だけ見ると、明らかな差があるように見えます。しかし、市町村別は、細かく分けすぎです。そして、福島県の西側の町村は人口1万人にも満たないところがほとんどです。そういうところでは、特に異常なことが起きていなくても、数年間は発生者ゼロが続き、ある年には数人でも発生すれば、人口が少ないので他地域を上回る発生率になります。統計的に処理するには人口と期間が少なすぎるということです。

 図に、人口(単位:千人)を書き加えてみました。発生率の少ない白と、多い赤はほとんど人口の少ない(1万人以下)市町村であることが分かります。そのような地域は西側に多いというだけに私には見えます。それ以外の色のついている地域は人口1万5千人以上です。論文にすれば、専門家がそのあたりをしっかり査読してくれると思いますが、日本社会医学会での発表だけじゃなんともいえませんね。

【追記:7/29】
元のデータを確認しました。
第 19回「県民健康調査」検討委員会
http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/115357.pdf

 郷地所長が示した市町村別の色分け図で赤色は,川内村大熊町大玉村,平田村,下郷村,湯川村ですが,その「悪性ないし悪性の疑い」の人数は大玉村が2人で他は1人です。なお,大熊町は10万人当たりだと50人程度ですので黄色の間違ですね。
一次検査受診者は大玉村が1,373人で,他は千人以下です。この程度の人数で10万人当たりの発生者を云々する意味は無いでしょう。