言葉尻

 瀬戸内寂聴氏が「戦争中の方がまし」と発言して批判を受けているようです。本当にそんなことをいったのか疑わしいと思ったのですが,TVのインタビューで確かにそれらしいことを発言したようです。

「わたしが生きてきた90年でね、こんな悪い時代はなかった」瀬戸内寂聴さん・モーニングバード5/3(書きだし)
http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-1834.html

 うーん,でもこれ現在の政府の原発政策を批判するための強調がつい行きすぎただけではないかなあ。書き出しではなくて,映像をみないとニュアンスは分かりませんが,少なくとも主旨は現在の原発政策であって,戦時中は良かったということではありませんね。軽率な発言とは思いますが,TVのインタビューです。

 寂聴氏が戦時中を良く思っていないのは次のニュースで分かります。

安保関連法案の反対集会に瀬戸内寂聴さん
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150618/k10010119531000.html

93歳となる瀬戸内さんは、集会で、「去年、病気になったが、最近のこの状態に寝ていられないほど心を痛めた。戦争の真っただ中に青春を過ごし、戦争がいかにひどくて大変なものか、身にしみて感じている。最近の日本の情勢を見ると、怖い戦争にどんどん近づいているような気がする」と訴えました。

 寂聴氏と違って,私は戦争中の体験はありません。戦後の教育で如何に酷い時代であったかを教え込まされてそう思っているだけです。客観的に当時の政策を評価すればその通りだと思いますが,実際に経験された人の主観的感覚はまた別ではないでしょうか。私の両親も戦争を経験していますが,コリゴリだと言うほどではなく,普通に暮らしていたようです。特に父は戦地に赴き死ぬ目に遭っていて,あんな時代が良いとは絶対に考えていなかったはずですが,当時は当時でそれなりに充実感を感じていたようなフシもありました。それに比べて今の時代への不満や失望みたいなものも感じているようでした。

 だからといって,「戦争中の方がまし」という発言に賛同するわけではありませんし,客観的事実として間違いだと思います。寂聴氏自身,戦争がいかにひどくて大変なものか、身にしみて感じています。ただ,そのことと,主観的な経験の記憶の印象は必ずしも同じとは限らず,それが不適切な場面でつい言葉尻に現れることもあるのではないでしょうか。