バカ受けした裸の王様

 むかしむかし,とある国のある城に王さまが住んでいました。王さまはお笑いが大好きで,ネタを仕入れることばかりにお金を使っていました。王さまののぞむことといったら,お笑いでみんなにおもしろいといわれることでした。

 ある日、二人のさぎ師が町にやって来ました。二人は人々に、自分はお笑いのシナリオ作家だとウソをつきました。それも世界でいちばんおもしろいシナリオが作れるといいはり、人々に信じこませてしまいました。

 「とてもおもしろいけど,このネタはとくべつなのです。」とさぎ師は言います。「自分にふさわしくない仕事をしている人と、バカな人にはわからないネタなのです。」

 その話を聞いた人々はたいそうおどろきました。たいへんなうわさになって、たちまちこのめずらしいネタの話は王さまの耳にも入りました。

「そんなネタがあるのか。わくわくするわい。」と、お笑いが大好きな王さまは思いました。「もしわしがそのネタを演じれば,一やく人気者だ。さっそくネタをを作らせよう。このところ,わしの支持りつもさがりぎみだし」

 王さまはお金をたくさん用意し、さぎ師にシナリオ料としてわたしました。このお金ですぐにでもネタを作ってくれ、とたのみました。さぎ師はよろこんで引き受けました。

 ほどなくネタはかんせいし,王さまにシナリオがとどけられました。わくわくしながら王さまはシナリオを読みました。でも,どこがおもしろいのかまったく分かりませんでした。王さまは自分がバカかもしれないと思うとだんだんこわくなってきました。また、王さまにふさわしくないかと考えると、おそろしくもなってきました。王さまのいちばんおそれていたことでした。王さまが王さまでなくなるなんて、たえられなかったのです。

 だから、王さまはおもしろくもないのに大声で笑いました。笑いながらけらいたちにも話しました。けらいたちも何がおもしろいか分かりませんでしたが,王さまの手前,引きつった笑いをしました。そのはんのうをみた王さまは,ついさっきまで,こわがっていたのも忘れて「イケル」と思い,王立演芸場でみんなの前で演じようとむぼうなことを考えました。「きっと大受けするにちがいない。」と楽しくなってきました。

 それを見ていたかしこい大臣はさぎ師たちのたくらみに気づきました。しかし,王さまの道楽にウンザリしていた大臣は,この機会を利用して王さまに大恥をかかせてやろうと考えました。

 大人の事情など気にしないで思った事をそのまま口に出す子どもたちを演芸場に招待して大スベリの散々のめにあわせようと計画をねりました。なんと悪い大臣でしょう。

 いよいよ王さまの独演会の日がやって来ました。大臣は選りすぐりのひねた悪ガキを選び出して王立演芸場の舞台前の最前列に座らせました。王さまが舞台に登場し,漫才をはじめました。

「ラッスン・ゴレライ〜♪ なんですの〜♪」

 さぎ師8.6病ブースカのシナリオ通りです。子ども達が「王さま,つまんない」と大ブーイングするのを,悪い大臣は息をのんで舞台の袖で待ちました。

 ところがなんと,演芸場は爆笑の嵐にみまわれました。ばか受けです。悪い大臣は,子どもはリズムネタが大好きなことをうっかり忘れていたのです。


*次の訳をベースにしました。
http://www.alz.jp/221b/aozora/the_emperors_new_suit.html