出口調査では投票しなかった人の意見は分からない

 大阪の住民投票をモデルにした架空の話です。

 ある政策について,賛否の住民投票を行い出口調査を行ったところ,住民の80%を占める現役世代は賛成60%,反対40%となり,住民の20%を占める老人世代では賛成30%,反対70%でした。ところが住民投票の集計結果は賛成45%,反対55%で否決されました。その原因は,投票率の差でした。現役世代の投票率はわずか20%に対して,老人世代は80%だったのでした。

 投票後に,「この結果は,現役世代が投票を行わなかったためで,全人口の80%を占める現役世代の60%が賛成という意見が反映されなかったのは自業自得である」という解説をする人が出てきました。確かに,投票しなかったのならば,投票結果が意に染まなくても自業自得です。しかしそれ以前に,この解説の前提には勘違いがあります。それは,現役世代の60%が賛成というところです。正しくは現役世代の20%の更に60%,つまり12%が賛成としか言えません。賛成60%とは投票を行った現役世代の推測値であり,現役世代全体の推測では有りません。出口調査とは投票した人の調査ですから当然のことです。

 では,投票しなかった人の意見傾向はどうかというと,厳密には分からないとしか言えません。投票した人と同じような比率と考えるのはあまり妥当とは言えません。投票しなかったのはあまり興味がなく,別にどっちだって良いと思っていると考えるのが自然です。しかし,それも推測といえば推測です。結局,はっきり言えるのは全人口の80%を占める現役世代の20%つまり,全人口の16%が投票を行い,その60%が賛成し,全人口の20%を占める老人世代の80%,つまり全人口の16%が投票を行い,その30%が賛成したという事だけです。

 投票しなかった人の意見は分からず,投票した人の意見で決めるしかありません。それは,投票した16%+16%=32%のうち,45%しか賛成しなかったので否決という結果になります。実に単純な話で,なにか変なことが起きているのでもなく,ごまかしがあるのでもありません。投票率が低かったために現役世代の60%を占める賛成意見が埋もれてしまったというのは早とちりです。言うまでもありませんが,出口調査では投票しなかった人の意見は分かりません。