男性の「美容室でカット不可」通知は有効か

少し以前に,美容師が男性のカッティングのみを行うのは違法か,という話題がありました。その根拠は昭和53年の厚生省の通知です。

理容師法及び美容師法の運用について
(各都道府県知事あて厚生省環境衛生局長通知
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/cgi-bin/t_document.cgi?
MODE=tsuchi&DMODE=CONTENTS&SMODE=NORMAL&KEYWORD=&EFSNO=2968&PAGE=1&FILE=&POS=0

 しかし,この通知はおそらく無効になっています。というのも2000年の地方分権改革以降,地方分権の理念に反するとして,国から途方自治体に発出した通達や通知は拘束力がなくなっています。国が地方自治体に出す文書は,単なる情報提供か技術的助言という位置付けに変更されました。ただし例外もあって,国から地方自治体に事務を委託する法定受託事務に係わる処理基準は従う必要があります。具体的な法定受託事務地方自治法の別表1,2に定められていて,過去の通達,通知類のなかで処理基準に該当するものがあらためて国から通知されている模様です。

今後発出する通知・通達の取扱いについて - 総務省
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kanbo02_01000005.html

地方分権に伴う通達の取扱い
http://www.hido.or.jp/14gyousei_backnumber/library_data/hourei_data/0112houreiQ&A.pdf

 理容師法と美容師法関連の法定受託事務地方自治法の別表を見たところありませんでした。従って,昭和53年の通知は無効なのではないでしょうか。

 ただし,自治体によってはこの通知を厳格に守っているところもあるようですが,それはその自治体の判断ということかと思います。例えば,大阪市は「理容師法(第6条)又は美容師法(第6条)違反となる場合があります。」とまで言っています。ただ,法第6条の規定は「理容(美容)師の免許を受けた者でなければ、理容(美容)を業としてはならない。」と定めているだけです。

理容師・美容師の皆さまへ 大阪市
http://www.city.osaka.lg.jp/kenko/page/0000281415.html