大家族

田母神俊雄
戦前の大家族制度を取り戻してはどうかと思う。じいちゃん、ばあちゃんが家にいれば若い夫婦が二人とも働いていても、子供が学校から帰ればじいちゃん、ばあちゃんがいる。保育園などに行かなくてもいい。生活の知恵や伝統、文化が子どもに伝わる。子供の虐待などもなくなる。
https://twitter.com/toshio_tamogami/status/534467964809277440

 このツイートを見て,思わず次のような批判的ブクマコメントを書いてしまいました。

「大家族制度が崩壊したのは社会全体の変化が原因だから、大家族制度だけつまみ食いで復活するのは無理でしょ。 」

 というのも,子供の頃に社会科の授業で,「戦後,核家族化が進んだ」と習ったような記憶があるからです。核家族化が進んだのは経済成長と都市への人口流入という社会背景があるのだろうと思ったわけです。海外でも発展途上国では大家族が多いような気がしたので,少しネットを検索してみたら,wikipediaに次のような記述がありました。

日本では戦前から比較的小規模な核家族が最も一般的な家族形態であり、戦前の農村では大家族制度が主流であったという認識は(一部の地域を除き)誤りである。

 れれっ。田母神氏を批判したけど,自分も,なにやら大きな勘違いをしていたようです。ただ,wikipediaだけでは信用できないので,もう少し検索したら,理事長が空海との不思議な霊的結縁により、霊能力を授かったという,「国づくり人づくり財団」という団体が引っかかりました。団体はアレげですが,国政調査による家族形態の変遷の表がありました。

核家族は家族の形ー国づくり人づくり財団
http://www.kunidukuri-hitodukuri.jp/web/koso8/koso8_column_henbou.html

 確かに,核家族の比率は増えていますが,大差はありません。大正8年で54%,戦後は60%前後で安定しています。拡大家族世帯(大家族)は大正8年の39%から平成2年の20%へと半減していますけど,自分の認識とは随分違います。核家族化が進んだのではなく,単独世帯化つまり独身が増えたというのが本当のところのようです。戦前は兄弟は多かったにしても,祖父母と暮らすのが多かったわけではなさそうです。

 考えて見れば,戦前の農家も豪農でもない限り,そんな大きな家には住んでいませんから,せいぜい直系3世代が暮らすのが限度だったと思われます。長男以外は家を出なければなりませんし,人生50年の時代には3世代が揃っている期間は短かったと想像できます。チビまる子ちゃんと友蔵の交流の世界は既に戦後の話です。戦前には交流できる時間はわずかでおじいちゃん,おばあちゃんは亡くなってしまうことが多かったのじゃないでしょうか。

 おじいちゃんっ子とかおばあちゃんっ子という言葉がありますが,あれは戦後に寿命が延びて元気な年寄りが増えてからの話かもしれません。田母神氏も私も,戦前の記憶があるはずなく,子供の頃の記憶があるだけです。その記憶から勝手に戦前の世界を空想し,事実だったと思い込んでいたようです。我々が古い伝統と歴史があると思っているものの多くが,意外に新しいものであることはよく有りますけど,これもその1例かもしれません。