ラウンドアバウト交差点のメリット,デメリット

信号のない交差点をぐるぐる回り、事故が8割減少すると話題の「ラウンドアバウト」日本でも運用開始
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1808156.html

 海外でラウンドアバウト交差点を見て,是非日本にも導入すべきだという見解の大学の先生を知っています。ある講演会でヨーロッパの田舎町の例を紹介していましたが,交通容量が少ないなどの欠点については触れていませんでした。知らないのか,知っていて言わないのかは分かりません。検索すれば,ラウンドアバウトのメリットやデメリットを説明したサイトはあります。ただし,何故そうなるのかまで分かり安く説明したものは見あたりません。仕方無いので自分で考えて見たら原理は単純なようです。実際の交通はもっと複雑な現象があるかも知れませんが,基本的なところを説明します。

 子供の頃,住んでいた町の駅前にはロータリー交差点がありました。ロータリーの中にはランナーがゴールインするグリコサインが掲げられていました。江崎グリコ創始者の出身地だったからかもしれません。ちなみに,「江」や「渕」の付く名字が多い地域です。水っぽい土地柄なのです。町外れに工場もあって,グリコの景品を交換しに行った思い出が・・・いきなり脱線してしまいました。本論に戻ります。

 ロータリー交差点は昔は日本でも結構あったのですが,交通量の増加と共に次々に撤去されていきました。この事からも,交通容量が小さいことは推測出来ます。資料によれば,ロータリー交差点はロータリーへの進入側に優先権があったため,グリッドロックが生じてしまうと説明されています。グリッドロックとは、「想定容量を超える自動車が殺到して交差点などで渋滞が生じ、四方に延びた渋滞の列が別の交差点の通行を妨げることで次々と渋滞が連鎖していく現象」です。つまり,複数の交差点を含む広い地域の現象ですが,ロータリー交差点では1つの交差点でも発生してしまいます。互いに右折しようとする車列が右折を妨げてしまうからです。(図1)

 これを解消するためにロータリー内の環流を優先したのがラウンドアバウトです。ロータリーからの車の排出を優先して,ロックを防ぐわけです。この方式は,交差点に進入する車が減速しなければなりませんので,嬉しいことに交通事故が減るというメリットもあります。しかし,このメリットは,交通容量が小さいというデメリットと表裏一体なので,うまい話ばかりではありません。

 また,信号で強制的に交通の流れを制御しませんので,交通量が多くて,途切れのない流れによって,それと交錯する流れが止められてしまうという欠点もあります。(図2)これを解消するには,信号で流れを途切れさせれば良いのですが,それなら,普通の交差点にした方が良いでしょう。結局,ラウンドアバウトは流れに途切れが無いほどの多量の交通量には適していないと言うことになります。もちろん,1日中途切れがないようなことはありませんが,一旦出来てしまった渋滞列が他の交差点にまで達するようになると,複数交差点のグリッドロックが生じて,簡単には解消しなくなってしまいます。

 単に交通容量が少ないだけなら,少ないなりの流れはあります。ところが,グリッドロックが生じて了うと全く流れが止まります。言い換えれば交通容量ゼロになってしまいます。一旦排出される流れがロックされてしまうと,流入する流れが減ってもロックは解消されません。なぜなら,排出される流れをロックしているのは流入する流れではなくて,排出される流れ自身だからです。もう一度図1を見て頂ければよく分かると思います。ロータリー交差点では,1つの交差点だけでグリッドロックが生じて了います。ラウンドアバウトでは複数の交差点を含む地域内で生じますが,それは信号交差点も同じです。ただし,ラウンドアバウトでは,完全に流れが止められる(赤信号が永久に続くようなもの)筋が生じるので,それが他の交差点をロックする可能性が大きいかもしれません。

 ラウンドアバウトは,信号のない一方通行の丁字路で構成されています。直線路に優先権があって,そこに合流する車は,徐行して流れの途切れた時に進みます。途切れなければ,永遠に合流できませんので,途切れが程ほどにある交通量という前提で成り立っているといえます。 

 結局,敷地が広い郊外で,交通量が多くない地域に適しているのかなと思います。むしろ,車を減速させて交通量を減らしたい場合向きといえると思います。適材適所が肝要というありふれた話に帰着しました。そういえば,円形道路は方向が分かりづらく,ロータリーの何処で出たらよいのか戸惑うことがあります。私は沖縄の嘉手納ロータリーでその感覚を経験しました。信号がありますけど。