関連があっても差別の理由にはならない

メロン泥棒 ‏@melondorobou 7月21日
オタクが性犯罪者予備軍なら、スポーツ選手は暴行・強姦予備軍だし、ミュージシャンは覚醒剤使用予備軍だし、政治家は脱税・収賄予備軍だし、福岡県民は銃刀法違反予備軍だ。

 上に続けると,男は凶悪犯罪予備軍だし,香川県民は交通事故予備軍だし,女性は売春予備軍だし・・・。これらのカテゴリーと○○予備軍の○○には関連が確かめられたものもあります。従って,カテゴリーに属する人たちはそれぞれの犯罪を犯す可能性が高く,予防的に取り締まれば犯罪抑止に効果的です。実際に過激派や暴力団というカテゴリーに属していれば予防的に取り締まられる場合があります。

 暴力団よりも犯罪抑止上効果的なのは「男性」ですが,取り締まろうという機運は国会でも世論でも全く有りません。多分,男性は人口の半分というマジョリティだからでしょう。それに対してマイノリティは取り締まられやすいかもしれません。さすがに香川県民を取り締まることはないでしょうが。

 予防的取り締まりは例外的取り扱いで通常の民主国家で広く行われる事はありません。しかしながら,カテゴリーへの偏見や,差別的言動で実害を与えることはあります。実際に犯罪などと関連があるのだから当然だと考える人も多いようです。犯罪以外でも性格などの特性との関連が差別に繋がることが有ります。例えば,血液型と性格には関連はありませんが,もし仮に関連があるなら,職場の配置や幼稚園のクラス分けの根拠になると考える人もいます。県民性なら多少の関連の可能性もあります。しかし,関連があっても差別の根拠にはならないと私は考えており,上記の例からも納得頂けると思いますが,その理由をもう少し明確に述べます。

 差別の定義は色々ありますが,「本人の努力ではどうにもならないことで区別すること」というものがあります。この定義だと,盲人に運転免許を与えないことも差別になってしまいます。また,オタクは本人の努力で止めることができますので,差別ではないことになってしまいます。従って,これだけでは差別の定義として不足で「本人の特性や能力ではなく,属する社会的カテゴリ−,集団で区別すること」も考慮する必要があります。例えば,「女性は腕力は弱いので,力仕事には採用しない。」は差別になります。腕っ節の強い女性もいますから,本人の能力や特性で判断しなければなりません。

 社会的カテゴリー,集団の統計的平均値で判断することは,個々の人物の特性や能力を無視することになります。区別する側にとって多数の評価をする場合,統計的平均値を用いることは手間が省けるというメリットがありますが,区別される側にとっては,能力を無視され理不尽な損害を受けますので許されないということだと思います。この場合は,森を見ずに木を見る必要があります。

 現実は複雑なので,上記の判断では難しい場合もあるかも知れませんし,あまり「定義」に拘るのも不毛な議論になってしまいます。とはいえ,「本人の特性や能力ではなく,属する社会的カテゴリ−,集団で区別すること」という判断基準はかなり多くの事例に適用できますし,慣習的に差別ではないと思っていたことを見直すのにも役立ちます。例えば,一昔前は,女性はどうせ寿退社するのだからと,採用を控えたり職種を制限したりすることは普通に行われていました。現代では,そのような理由を明言することはなくても,本心では「業務に支障が出る可能性が高いから」と思って女性採用を控えている経営者がまだいないとも限りません。このような根強い差別も定義から判断できます。

 差別が根強いのは,情報が少ない場合に間接的な状況から予測するという人間の本能に根ざしているためかもしれません。その予測は大抵,用心から好ましくないものになります。夜中に動き回る物陰は害獣の可能性が高いと感じ恐怖の感情がわき上がります。幽霊なんていないと理屈では分かっていても,怖いという感情は無くなりません。夜中に徘徊する人物は不審者のような気がしますし,何が良いのか判らないアニメに熱中しているオタクは性犯罪者のように感じるかもしれません。得体の知れないものへの恐怖が差別の源泉ではないでしょうか。ですから,差別する人は差別している相手のことをよく知らなかったりします。