ソイレント,自然食品,ドラッグ

完全食品ソイレントが突きつけるもの
「食」とは何か
http://honz.jp/articles/-/40498

 興味深い話です。「歩く化学反応」の燃料であるソイレントの対極として,脳裏に浮かんだものがあります。ローマ時代の贅沢な食事です。食の快楽を追い求めた結果,食べたものを嘔吐して次の食事をしたという習慣です。「歩く化学反応」の燃料の意味は全く無くなり,純粋に「文化的存在」になってしまっています。あるいは,生殖を目的としない快楽追求の性行為も連想させます。

 面白いのは,現代の食品の場合は「文化的存在」の自然食とかオーガニックが健康的なイメージがありますが,同じ「文化的存在」でも,ローマ式食事やフェチ的な性行動は不健康なイメージがあることです。このイメージの齟齬は,健康的と言っても肉体的なものと精神的なものがあるからでしょう。しかし,肉体と精神は密接に関係していて,厳密には分離出来ません。脳内の化学反応が精神ですからね。

 そうでは有るのですが,便宜的に肉体と精神に分けて考えると,肉体的な健康に良いのは自然食品よりもソイレントに分がありそうです。自然食品の類は,ほとんど文化的存在なのですが,肉体的に健康に良いと思い込むことで精神的な満足を得るという倒錯的な状態になっています。

 倒錯だろうが勘違いだろうが,文化を楽しむという強欲さが人間には有ります。それはそれで好きな人は楽しめば良いと思いますが,最終的に「歩く化学反応」としての制約を受けるという身も蓋もない現実も有ります。毒の化学反応で人間は簡単に死にますし,ほんのわずかの脳内の化学物質で幸福の絶頂を味わったり,地獄の苦しみを感じます。そのような身も蓋もない事実さえも快楽に利用するのも人間で,かつてのサイケデリックのようなドラッグ・カルチャーがその例です。それからアルコールも。

 いやはや,人間ときたら・・・