「放射性PM2.5」「放射性打撲」「可燃性荷重」

放射性PM2.5としての原発フォールアウトを考える
http://d.hatena.ne.jp/sivad/20140528/p1

 専門的な指摘は専門家にお任せしますが,素人なりに奇妙に感じることを述べてみます。

1.新しい機序を考え出さないと説明出来ない現象があるのかなあ

 この論考は、低線量放射線で鼻血が起こりうることを説明するのが目的かと思います。しかし,鼻血はありふれた症状で何も低線量放射線などというアクロバチックなことを考えなくても説明出来ます。それらの説明では不十分で原発事故以前には見られなかった特殊な鼻血症状の報告でもあるんでしょうか。機序はいくらでも考え出せると思いますが,その必要がそもそもあるのですかね。

 たまたま昨日,ダニ媒介性の重症熱性血小板減少症候群SFTS)を取り上げた番組を見ました。SFTSの症状は発熱と消化器症状で,同様の症状を起こす病気は他にも色々有ります。TVでは長崎の症例を紹介していましたが,様々な原因を疑って調べても,調査結果が陰性となり原因不明だったそうです。結局,随分あとで,SFTSという新しい感染症であることがわかったそうです。こういう場合なら新しい原因を疑う必要があります。一方,頭痛,発熱が2,3日続き回復したと言うだけなら,風邪で説明出来ます。別に新種の恐ろしい感染症の仮説を持ち出す必要もありません。

2.新しい機序も提案していないようだけど

 「放射性PM2.5」による新しい機序が必要な理由もわかりませんが,新しい機序についてもsivadさんは提案していないように私には思えます。説明しているのは,既に分かっている(高線量)被ばくの機序と不溶性微粒子の機序だけのようですが,見落としているのでしょうか?説明らしきものは,次の記述くらいです。

 
「放射性PMとしての原発フォールアウトも、不溶性微粒子として、基本的な動態はこれと同様なものが想定されます。放射性であることは活性酸素の生成を通じて、さらに強い炎症促進能を持つ可能性が高いでしょう。」

 でも,これって「放射性PM」としてじゃなくて,「不溶性微粒子」としての機序と放射性の機序がそれぞれある言っているだけに思えるんですけどね。

3.結局,低線量放射線とどう繋がるの

 説明されている,被ばくとPM2.5(不溶性微粒子)の発症の機序についても,被ばくは高線量被ばくの急性の粘膜炎の説明で,PM2.5も職業病の珪肺について述べていることからも分かる様に大量の吸引の場合の説明じゃないのでしょうか。中国でPM2.5による死者が多数でているのも,高濃度汚染が有るためです。これらの説明は多分正しいのでしょうが,低線量で鼻血が出るという話と全然繋がっていません。

 放射性フォールアウトの粒子は大きさ的にPM2.5に相当するので,放射性の影響の他,微粒子としての影響もあるという話だけなら,その通りでしょう。しかし,両方ともそれ相応の量が有る場合の話です。両者が組み合わさるとどういうわけか低線量でも鼻血が出るという機序の説明は一切有りません。

 1つ考えられるのは,確率的影響があるかどうかさえわからない程度の低線量しか発生しない極微量の放射性物質でも,不溶性微粒子としての影響で鼻血が出るという可能性です。感覚的には,逆の,不溶性微粒子として影響は無い量でも,放射性の影響は有る方が有りそうな気がしますが,いずれにせよ,定量的な説明が必要です。でも,その説明も有りません。

 
4.放射性と不溶性微粒子の影響は独立ではないの

 最初に「放射性PM2.5」という言葉を目にしたとき,奇妙な印象を受けました。放射性の健康影響とPM2.5の健康影響は既に分かっています。それに加えて,放射性とPM2.5が組み合わさる相乗効果で今まで知られていない新しい影響があるという印象を受けたからです。まるで「放射性打撲」という新しい症状があるような印象と言えば良いでしょうか。

 原発の燃料棒で殴られれば,打撲を負いますが,放射線も出していますのでその健康影響もあるでしょう。しかし,「放射性打撲」というと,それ以上の相乗効果の症状があるというような感じです。絶対あり得ないとは言えませんが,結局1.で述べたように,そういう相乗効果でなければ説明出来ない症状が起こっているのかということに帰着します。打撲と放射線の影響のそれぞれ独立の影響ならわざわざ「放射性打撲」という言葉を作る必要も無いでしょう。

 「放射性PM2.5」という言葉の奇妙さは次のような感じです。

 建築物の安全に影響を与える要因に荷重と火災が有ります。結構,積載重量として大きいのは書類です。書類を詰め込みすぎて床が抜ける事故もたまに有ります。また,書類は燃え草でもあり防火上注意が必要です。荷重に対する安全性と火災に対する安全性の検討はそれぞれ必要です。しかも,可燃性だと本1冊でも床が抜けるという現象が有り,「可燃性荷重」は不燃性加重とは異なるその動態を考慮することが必要不可欠になります。(5/30修正)