親じゃないのだから医者が何でも面倒みてくれると期待しないこと

「前医から言われた衝撃的な一言」はなぜ放たれているのか?  
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 手の施しようがない患者は病院から見放されるという問題提起です。確かに大きな問題ですが,まだ医者や病院が信頼されているという証拠でもあると思います。少し前までは医者嫌いという人種が結構存在していて,病院なんかで死にたくないし,入院だってまっぴらごめんと言っていました。

 医者という職業はうさんくさく見られているところがあったというと言い過ぎですが,名医もいればヤブもいるというのが普通の認識だった時代が有ったのです。そう言う時代では,不治の病というのが普通にあって,それは諦めて受け入れるしか無かったわけです。それは決して嬉しい現実では有りませんが,人間にはどうしようもない事もあるのも事実です。

 現代では,医学や医者のステータスが上がり,それは大変結構な事なのですが,医者や病院に幻想を抱く人も増えているのではないでしょうか。私が中学生の頃,祖父は亡くなりましたが,随分長いこと寝たきりでした。大人は仕事で忙しいので,子供の私が祖父の相手役でした。気管支炎で呼吸困難の発作を起こすのに,煙草を買いに行かされました。大抵の家庭に,その種の寝たきり老人がいたような気がします。クレージーキャッツのコントのネタになっているくらいでした。

 もちろん,そんな時代がよかったなどと言うつもりはありません。ちゃんと病院や医者が面倒を見てくれる方がよいに決まっています。そのためにも,冒頭の問題提起は重要だと思います。それは社会制度の問題です。ただ,それと同時に,医者や病院でも不可能なことがあることを忘れないようにすべきだと思います。さもないと,不満がたまる一方で不幸になるだけです。こちらは個人の気持ちの持ちようの問題です。少なくとも,人間は必ず死にますし,医者でもそれは阻止できません。死や手の施しようのない状況に面したときどのように振る舞うかというのは,自分自身で考えておくべきで,医者や病院が何とかしてくれるというのは幻想でしょう。

 社会制度としては,不便は少ない方がよいし,少なくする努力は必要だけど,個人の意識としては,無くせると思ってはいけませんね。そんなことを真剣に考えなければならない歳になってきました。