スマリヤンバージョンの二つの封筒の問題

 以前に「二つの封筒の問題ー確率と現実」http://d.hatena.ne.jp/shinzor/20131207/1386377133という記事を書きましたが,二つの封筒の問題には確率の要素のないスマリヤンの二つの文というものが有るそうです。「モンティ・ホール問題好きのホームページ」と言うところに紹介してありました。
http://the-apon.com/coffeedonuts/smulyan-two-envelope.html

•文1と文2
文1 封筒を交換して増額する場合の増額は封筒を交換して半減する場合の減額を上回る。
文2 それらの金額(増額と減額)は等しい。

•文1の証明
交換前の金額を x とすると、封筒を交換して増額する場合の増額は x で、 封筒を交換して半減する場合の減額は x/2 なので、文1 が成り立つ。

•文2の証明
二つの封筒の金額の差を d とすると、封筒を交換して増額する場合の増額は d で、 封筒を交換して半減する場合の減額も d なので、文2 が成り立つ。

 文1と文2は相反することを述べているのに両方成り立つので矛盾が生じるというものです。引用先に実は文1と文2は相反する事を述べていないという分かりやすい説明がしてあります。

 もしかしたら,これだと全然矛盾を感じない人もいるのではないでしょうか。金額を記号で表していると多少微妙ですが,具体的金額にしてみると全然矛盾感が無くなります。

•文1の証明
交換前の金額を2000円 とすると、封筒を交換して増額する場合の増額は2000円で、 封筒を交換して半減する場合の減額は 1000円 なので、文1 が成り立つ。

•文2の証明
二つの封筒の金額の差を 2000円 とすると、封筒を交換して増額する場合の増額は 2000円 で、 封筒を交換して半減する場合の減額も 2000円 なので、文2 が成り立つ。

 まだ矛盾感が残っている人の為に,更に丁寧に書きます。

•文1の証明
2000円 を4000円と交換する場合の増額は2000円で、2000円を1000円と交換して半減する場合の減額は1000円 なので、文1 が成り立つ。

•文2の証明
2000円 を4000円と交換する場合の増額は2000円 で、4000円を2000円と交換して半減する場合の減額も2000円 なので、文2 が成り立つ。

 別に相反してはいません。全然別の事柄です。このことは,以前のエントリー「二つの封筒の問題ー確率と現実」で述べた事と似ています。

文1が述べている事は次の様なことです。1000円と2000円,2000円と4000円,4000円と8000円の3つの組み合わせの封筒の組が有ったとします。その場合,

1.一つの組を選び,更にその内の一つをあけて1000円なら,別の封筒に変えた方が得です。
2.一つの組を選び,更にその内の一つをあけて2000円なら,別の封筒に変えた方が得です。
3.一つの組を選び,更にその内の一つをあけて4000円なら,別の封筒に変えた方が得です。
4.一つの組を選び,更にその内の一つをあけて8000円なら,別の封筒に変えない方が得です。

 これを拡張して,現実には有り得ませんが,無限の資産を持つ胴元がすべての1:2の金額の組み合わせの組を一つずつ用意出来たなら,つまり同じ確率で選ばれるようにできたなら,出た金額に拘わらず,変えた方が得です。上限の4.が無くなるからです。

他方の文2が述べている事は,

1.1000円と2000円の組において,交換し増額した場合と減額した場合の額は同じ1000円である。
2.2000円と4000円の組において,交換し増額した場合と減額した場合の額は同じ2000円である。
3.4000円と8000円の組において,交換し増額した場合と減額した場合の額は同じ4000円である。

当たり前で,別に文1と矛盾しません。元の確率バージョンの二つの封筒の問題に戻って考えると,

文1 一つの封筒を開いた場合,上限額以外なら別の封筒に変えた方が得であり,上限額なら変えない方が得である。
文2 封筒を開く前には,どちらの封筒を選んだ方が得かは五分五分である。

言い換えれば,一つの封筒を開いたときの額とその時の開いていない封筒の額の期待値は異なるが(文1),一つの封筒を開いた時の額の期待値と開いていない封筒の額の期待値の期待値は同じである。(文2)   

無限の組があり上限がないならば,

文1 一つの封筒を開いた場合,別の封筒に変えた方が得である。
文2 封筒を開く前には,どちらの封筒を選んだ方が得かは五分五分である。

矛盾は有りません。
開いた封筒の額がX円なら,開いていない方の額の期待値は1.25X円で,X<1.25Xですが(文1),開いた封筒の額の期待値は∞円で,開いていない方の額の期待値の期待値は1.25∞で,∞=1.25∞ で同じです(文2)。