時代の先端を行く建設業?

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140320-00000111-jij-bus_all

性労働者、5年後倍増=人手不足対策で―日建連
 ゼネコン140社が加盟する日本建設業連合会(日建連)は20日、建設現場での人手不足対策として、一定の技術を身に付けた女性の技能労働者を5年以内に2倍の18万人に引き上げる目標を発表した。日建連が女性の就労目標を掲げるのは初めて。
 東日本大震災の被災地復興に加えて2020年の東京五輪が決まり、建設需要は今後拡大する見通しで、人手不足の深刻化が懸念されている。中村満義会長(鹿島社長)は記者会見で、「建設業の魅力を維持するため、女性を含め若者にもっと業界に入ってもらいたい」と強調した。

 随分以前の3K産業脱出の時も女性の活用が言われていたが,日建連が女性の就労目標を掲げるのは初めてなのだそうだ。心配なのは,東京五輪が終わった後のことだ。まさか,その時にクビを切りやすいというのが理由ではないと思うが。

 建設業は製品開発によって自ら需要を生み出すことは殆どなく,工事需要次第の産業だ。好況時は人手不足,不況時は末端中小業者の倒産,他業種転換を繰り返してきた。多重下請け構造の産業の特徴である供給側の労働力を調整して対応してきた。対応というよりも,仕事がない時期には,経営基盤の弱いところから潰れたり,日雇い労働者がヒマになるだけである。

 景気に左右されるのは別に建設業に限ったことではないが,他の産業では需要の開発,機械化,省力化などの対応がなされている。でも建設業は基本的に供給側の労務量の調整しかない。調整しやすい労働力として外国人労働者の導入が早かったのも建設業である。

 建設労働には熟練を要する職人技も多い。大工や左官などで,熟練工の減少が大きな問題となっている。かといって,熟練工を養成するという方向には向かわずに,熟練を要しない工法へ変化している。伝統的な木組みを行うよりも,釘打ちで済むツーバイフォー工法が住宅の主流である。この結果,建設労働は,単純労働化が進んだ。単純労働は労働力の調整がしやすい。

 最近は,他の産業でも外国人労働者やパートタイム,派遣労働,非正規社員が目立ち,社会問題化しているが,建設業は昔からそういう状態であったのだ。

 とはいえ,熟練を要する仕事もまだまだ多い。その労働力として「一人親方」が存在する。一人親方とは,従業員のいない個人事業主である。従業員を抱えて会社経営を行えば「親方」であるが,その一歩前の状態である。労働法規的には「一人親方」は事業主であって,労働者ではない。元請けとその都度,契約を結び仕事を行うのが建前である。しかし,一人であり,労働者と指して実態は変わらない。これが,労務上の問題になっているのは建設業では昔からいわれていることである。

 最近では,他の産業,特にIT関係や研究業務などで企業内独立,契約社員という新しい形態が現れているらしいが,これはまさに「一人親方」である。熟練技能を持っているという点も似ている。建設業は時代の先端を走っていたのだ。良い意味とは限らないが。

 女性の社会進出,国際化,企業内独立は,新しい働き方として肯定的に捉えられることが多い。しかし,「女性」を除き,建設業では昔から行われていた。そして,色々と問題も多い。何事も,良い面と悪い面が有ると言うことだと思う。良い面ばかり強調する言説は疑った方が良い。女性労働者が単なる労働力の調整代にならないことを期待する。