「官(公)」と「民」は競争しない

 「官」の仕事の民営化路線は,小泉内閣以来続いています。この傾向は,昔の官製製鉄工場が民営化した様なものと考えれば自然ですが,少し勘違いをしている人もいます。

「官」主導の公的サービスが格差社会を生み出す
http://shirousagi.hatenablog.jp/entry/mokuninihatayoranai/

 勘違いは,「官」と「民」が仕事を取り合って競争しているという認識です。国民という消費者にサービスを提供する商売敵なのだけれども,「官」は「民」に比べて商売能力に劣るという考え方です。そのため,「官」は「民」を見習うか,さもなければ「民」に任せなさいと何かというと繰り返されています。国民は発注者で「官」と「民」は受注者という関係だと思っている訳です。

 実際は全く違います。「官」は消費者の「国民」から公的サービスの発注の委託を受けている,発注代理人です。自治会やマンションの管理組合みたいなものです。例えば,管理組合は共用設備であるエレベーターの管理業務を住民の代表として発注しているのであって,受注して儲けているのでは有りません。

 管理組合なら明白な事実が、国レベルになるとわかりにくくなってしまうようです。その結果,独占企業が消費者から搾取しているように,「官」も「国民」から高い料金(税金)を巻き上げて、欠陥商品(公的サービス)を売りつけていると錯覚しているんですね。その結果,悪徳業者の「官」などいらない,良心的な「民間サービス」にすれば良いなどと言い出します。

 少し考えれば分かることですが,エレベーターの監理業務を住民一人一人が自分の使う分だけ別々に業者に発注することなど出来ません。住民が集まって,費用負担を決めて,一括して発注しなければなりません。住民の夕食の材料みたいに個別に買えるものは,最初から管理組合が関与する必要はありませんが,公的な共用部分は必ず有りますので,管理組合は必ず必要です。道路工事を国民がそれぞれ発注することは有り得ません。

 官製工場が存在したのは,民間工場がなかっただけのことで,除草業者がいないので,住民が草取りしているようなものです。別に,住民は除草業者と競争なんかしなくても良いのです。ただし,マンションと違って,国は所帯が大きいので,草取りの専門集団が形成されたりします。昔の官製工場の類です。これが民間工場に移行する過程では,「市場化テスト」として競争させられることはあります。

 周囲が勘違いするものだから、公務員もその気になって、一所懸命に民間企業と張り合ったりします。でもそれって公務員の仕事を忘れています。民間企業と競争するのなら、民営化して役所の外に出ればよいのです。公共的利益のために役所で無ければ出来ない仕事は、民間と競争するようなものではありません。

 なお,リンク先にある,市場経済にブレーキをかける役割(レフェリー)というのは,いわゆる業行政であり,サービス調達業務(発注)とは全く別物です。組織的にも全く別の部署が行っています。マンション管理組合で言えば,共用部分の使用規則を決めるような仕事です。