「官僚は頭がいいんです」って,何がいいたいのか

■情緒的批判の毎日記事

避難解除:「官僚は頭がいいんです」、判断押し切る 福島 
http://mainichi.jp/select/news/20140224k0000e040240000c.html

 この記事は一体何を問題にしているのですかね。なんとなく記者は避難解除反対の立場の様ですが,はっきりと書いてはありません。というか,そんなことは当然の前提なので説明するまでも無いという雰囲気も感じます。一応文字通り読めば,頭の良い官僚によるシナリオ通りの茶番説明会批判です。

 最初に反対意見を語らせ、中盤に賛成意見が出たところで帰還派の住民に解除を提案させ、政府側が「4月解除」の方針を一斉に言い渡す??。「解除反対」が半数以上とみられる住民たちは「国の判断」で押し切られた形だ。会合は当局への不信感という禍根を残すものとなった。

 やり口が汚いということで,国の方針の内容に関係無いのでしょうか。であるなら,仮に国の方針が「解除継続」でも記者は批判するはずですが,そうでもなさそうですね。そもそも,国の方針の説明会ですから,国は自分の方針が受け入れられるようにシナリオを作るのは当然でしょう。もちろん,住民がシナリオに従う義務はこれっぽっちもありませんが,なんだが唯々諾々と受け入れちゃったみたいに書いて有りますね。この記事は住民批判ですか?

 確かに,説明や意見の順番だけで,「「国の判断」で押し切られた」と嘆くのはあまりに情けないというか,ちゃんと,国に突っ込めよと言いたくなります。いやまてよ,突っ込みどころがなかったのではないのか?内容に突っ込めないものだから,会議進行のやり口が汚いという情けない負け惜しみしか言えないのではないのか?あ,いや,負け惜しみは記者が言っているのであって住民ではありませんでした。

 そういえば,この記事には住民の意見が反映されないなどの手続き的不備の具体的指摘がありません。間違いを指摘できないので,「言い方ってもんがあるでしょう」と言っているような風情です。だから,何を問題にしているのかよく分からないのです。

 避難指示というのは,国民に保証された自由を制限する緊急避難的な措置。
 出来るだけ速く解除できるならその方が望ましい。
 戻りたくない人は戻らない自由がある。
 自由の制限は,住民の健康に悪影響を与える諸条件があったから。
 その諸条件が解消されていないなら解除不可。

 解消されていないという住民の意見があったのですかね。ならば,国はけしからんです。一応,それらしきものが記事に書いて有ります。

 「森林除染を一切しなければ森を生活の糧にしていた者への補償はどうなる」
 「子供が本当に安心して暮らせる基準を示してくれ」
 「安全にすべき場所でなぜあえて危険物を燃やす焼却炉を計画するのか」

■くだらない記事はともかく,住民の不安を考えて見る
 でも,これらは非難解除と直接関係するのでしょうか?間接的影響もすべて解消してからといっていたら永遠に帰還できません。解除できないことによる悪影響の方が大きくなるんじゃないでしょうか。3点の住民意見について私見を述べます。

 森林除染を終わらせるまでは,居住地区を含む全体の帰還をさせないというのは,帰還して生活が出来る人達に,「俺が生活できないから,みんなも我慢すべきだ」と巻き込む事になります。もちろん,生活に支障がある人たちには,個別の支援が必要ですが,そのことで全体の帰還を遅らせてはいけません。森を生活の糧にしている人だけなく,商店経営の人だってお客が減って生活出来ないかもしれません。そういうことを言い出したら,事故前の状況に完全に戻して,全住民一斉に帰還しなければならず,そんなことは不可能です。帰還できる人は速く帰還し,後から帰還する人たちの為に準備した方がよいと思います。

 「子供が本当に安心して暮らせる基準」とは,真意がよく分かりません。少なくとも,健康影響が出るような線量で解除判断をしているなら,国は間違っています。でも,そんなことではなさそうですね。「本当に」というところが微妙で,国がウソをついているという疑いを抱いている気配を感じさせます。疑心暗鬼になる気持ちは理解出来ますし,国も間違うこともあります。なので,国の判断に間違いがないかウラをとって確認すべきだと思います。個人では無理ですが,第三者の様々な情報があるので判断は可能だと思います。その情報を信用するかという難しい問題はありますが。疑惑と心配ばかりでは何も進まないと思います。

 焼却炉が危険なものなら大いに問題にすべきです。堂々と反論すれば,全国的な賛同が得られると思います。国に押し切られて,やり口が汚いとこぼすだけの情けない住民という記者のシナリオを演じることはありません。ただ,単に危険だというイメージによる誤解という可能性もあると思います。

 一部には,避難解除になれば,東電の補償金が減るのを心配しているという見方もあります。これは見ようによっては,被害実態とは関わりなく,焼け太りを狙っているかのような失礼な見方です。でも,多くの住民の方には,帰還しても生活出来るのだろうかという不安があるのだと思います。帰還しても生活できない人には東電補償金が減ることは深刻な問題かも知れません。しかし,帰還は切り離して考えるべきだと思います。繰り返しますが,避難指示は住民の自由を制限しています。帰還して生活出来る人の自由まで制限すべきではありません。可能な人から帰還することで,他の人の帰還も早める事が出来ると思います。

 途上国援助でも問題になりますが,金銭的援助や補償は人心と地域を荒廃させるという副作用があります。出来るだけ自活できる様にすべきで,帰還は可能なら速い方が良いと思います。でも,帰還したくても全く帰還の目処が立たない地域もあります。一方で心理的に帰還を躊躇する地域もあり,どちらにしても,地域の破壊です。前者は原発による直接的な破壊,後者はメディアや風評や補償金による間接的な破壊です。