ノーローン

 電車の窓上広告で,新生銀行グループのノーローンを久々に見かけました。随分以前に,サッカードイツ代表ゴールキーパーだったオリバー・カーンを起用した広告を見た覚えがあります。「ノーゴール」に引っかけた広告でした。その時感じたのは,他行が真似出来ないアイデアだということです。

 ノーローンとは,1週間無利息のキャッシング商品です。完済すれば,翌月も無利息で借り入れられます。当然,月に1回しか利用できません。何回でも利用出来るなら,1週間毎に返済と借り入れを繰り返せば,永遠に無利息が可能となりますからね。

 ということは,他に4つ以上の銀行が同じキャッシングを始めたら,ローテーションを組み,各銀行から月1回以内の借り入れにすれば,永遠に無利息です。手続きの手間を無視すれば,返さなくても良いわけですよ。そうなっては,困りますから,他の銀行は真似しにくいでしょう。

 また,このキャッシングは行動経済学の研究成果にもかなっています。というより,昔から商売では使われてきた手法を行動経済学が確認しただけですが。人間は「ただ」という言葉に弱いです。例えば「1割引」よりも「10個買えば1個ただ」の方に魅力を感じます。その結果,損する経験も多いので「ただほど高いものは無い」という言葉もできたのでしょう。ノーローンの場合も,普通1週間で返済ということはあまり考えられませんので,1週間以降の利息が高ければ必ずしも得とは限りません。しかし,「無利息」という言葉には魅力を感じます。

 さらに,敷居を低くするという効果も有りそうです。金利が気になる人も無利息ならと気軽に借りるかもしれません。結局1週間で完済できず利息を払うことになるわけですが,一旦借金癖が付けば,その後は借金への抵抗感が少なくなります。

 いろいろ考えますね。